「Abbey Road」スタジオの思い出01

思い出シリーズですwww

もう、十年以上も前になるだろうか、そのころ、「ロック」というジャンルは、もはや「オヤジ」しか聞かないものだという、世間の空気を感じた俺は(若者はクラブミュージック的なものを聞いていて、オヤジたちは『今の若い連中が聴く音楽はわからん』と嘆く声をよく耳にしたところからピピっときたのだが……)、「このさい、ターゲットを親父に絞ってしまって、ビートルズやストーンズやプログレ、サイケなんて音楽ばっかり載せる本をつくったらどうっすか?」と、今は亡き(先日ちょうど一周忌を迎えられた)、かわいがってもらっていた出版社の社長に、企画書を持っていった。

「団塊だってビートルズ世代だもんなあ。ニーズあるかも知れねーぞ」

GOサインが出て、本を作ることになった。有名なギタリストやロッカーに会って、インタビューなどもさせてもらった。で、創刊号がかなり売れた。ちょうどその時期、ストーンズが「新譜」を出したこともあり、創刊号はストーンズ特集を巻頭にもってくるような編集にした。自分が一番得意なビートルズは「とって」おいたのだ。運良く創刊号が売れたので、2号目は、ここぞとばかりにビートルズの特集をしようということになった。

そこに、とある「旅行代理店」が絡んできた。ちょうど、団塊の最初の世代あたりが、そろそろ引退という時期だったので、あらゆるジャンルの商売が「団塊世代」を狙っていた。その旅行代理店は、大胆なツアープランを企画していた。引退して退職金にありつきそうな「オヤジバンド」を狙って、バンド単位でイギリス旅行、ビートルズの聖地を見学するだけでなく、なんと、ビートルズが現役時代、そのほとんどの曲を録音した「アビーロード」スタジオで、「録音」も体験できるというものだった(当然、ツアー代はかなりの額になるのだが)。実は、「アビーロード」スタジオは、音楽スタジオとしては形式が古く、今時のプロのミュージシャンはあまり使わない状況だということで、「アビーロード」側も「額」さえ出せばスタジオを貸すよという感じだったようだ。

ところで、雑誌には「記事広告」というものがある。普通の記事のように見えるページだが、実はスポンサーの商品なりを押すページだ。うまく、その旅行代理店が「記事広告」としてOKをだせば、これは自分が作る本としてもおいしいと思った。巻頭にビートルズ特集を持ってきて、ビートルズが演奏していた「キャバーンクラブ」や、ジョンレノンが好きだった「ストロベリー・フィールズ」などが写真掲載できるわけだから……。しかもオヤジバンドをやってる人たちには、あの「アビーロード」で録音! というサプライズも用意できるわけだし……。抜かりない社長は、すでに「記事広告」として話をつけていたようで、イギリス旅行の経費は、「旅行代理店」がすべて持つことになったようだ。しかも、あと2人動向してもいいという話になっていたらしい。まず、カメラを使えるということから、かつてエロゲーを私と作っていた「○○さん」が選ばれた。もうひとりか~、多分「英語」が堪能な「△△さん」あたりになるんだろうな……。私は漠然とそう考えていた。

「○○さん」から、ある日、電話があった。

「藤江くん、今からいう期間、体あいてる? あとパスポート持ってるっけ? 社長が藤江くんを誘えっていってるのよ。この本企画したの藤江くんだしさ……」

え? お、俺? 俺がイギリスに? ロンドンに? しかも無料で……。嬉しいというより焦った。イギリスに行くメンバーの中で、原稿書いて、ページ組めるの俺しかいないじゃん。ろくでもない巻頭になってしまったらどうしよう……。しかし、とにもかくにも指名されたのだ。「行ってみたい」という気持ちには勝てなかった。

そして、我々はイギリスへと向かうのだが、思わぬアクシデントが……。

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