昔の話ですいません(エロゲーへの道)03

続きをほしがっている人が約ひとりいたのでwww

え、さて、なぜか、ロックのアルバムタイトルを次々と「○○さん」と一緒に言い合うことで決まった「狂気」というエロゲーのタイトル。そしてロックアルバムからタイトルをいただいたからには内容もロック的反骨でなくてはと、そのころ流行っていたエロゲーの真逆を行くような、「自己」をしっかりと持った、「性奴隷」なんていう男の都合で弄ばれない、活動的で強い意志をもった女子を主人公にしようということは決めたが、ストーリーはまったく未定だった。

プログラム的には「弟切草」や「かまいたちの夜」みたいに、途中で分岐点を設け、どっちにいったかを記憶しておく(例えば()に1を入れよ系)システムはなんとかできていた。ってことは、あとは「ノベル」部分を書き倒せばいいだけじゃないか。できるじゃねーか、「エロゲー」。俺は「嘘」はつかなかったぜ、ふふふ……。

と、ちょうどそのころ、このゲームを家電屋などに配ってくれる流通業者から、

「パッケージはできました? 女の子の顔がこうバンと出てるような感じの。エロゲーですから、女の子がパッケージにないとねえ。宣伝のために配りたいし、できればポスターも作りたい。女の子の顔が入ったパッケージを早く作っていただけるとこっちもやりやすいんですが……」

な、なに? 女の顔だと? 「かまいたちの夜」なんて登場人物シルエットだったじゃねーか。俺はそんな感じでこのゲームを……そうだよね、エロゲーなんだもんね。顔どころか裸とかも出てくるビジュアル必要だよね……。

普通ならこういう場合、エロを書き慣れたイラストレーターに発注するのが筋なんだろうが、俺は、このころ流行りだしていた「ポリゴン」(つまり3DCG)に眼をつけた。

「これをつかえば、様々な場面で、いちいち絵をかかなくても、カメラの角度を変えたり、女子が裸になったりする場面も量産できちゃうじゃん!」

さっそく俺は3Dアプリである「ライトウェーブ」とかいうのを購入、ポリゴンで女子を作ることにチャレンジした。……しかし、まだ当時は3Dとしては原始的なアプリだったため、本当に四角い板を空間に並べていって造形を作るという代物だった。「ビル」などの角張った建物は簡単につくれるのだが、女子の顔、さらに体となると、手強かった。髪の毛なんてどうやって作るかわからず、いろいろ試行錯誤を繰り返した……。

なんとか出来上がった顔は「かわいい」と呼べるレベルではなかった。だからパッケージ用にはPhotoshopで加工したものを使った。ポリゴン顔のアップにシャドーをかけて上の方には「狂気」というタイトル。おお、ロックっぽいじゃん、悪くないじゃん……。

しかし、流通業者は、

「これなんですか? 裸は? エロは? 顔だけ? これじゃ売れませんよ」

この野郎、ロックをわかってねーな! と俺が噛み付きかけたとき、「○○さん」が

「これね、ビートルズの2枚目のアルバムのイメージ使ってるの。あれ、4人の顔しか出てないでしょう。見せないことで想像力をかき立てるってのもあると思うし、普通のエロゲーが好きなアキバ系の人とは違う層にアピールできるかなと思って……。パソコンも普及してきたしね」

「○○さん」はさすが大人だ。流通業者をなんとか説得させた……。

ただ、問題があった。3Dのアプリを使った経験のある人なら分かると思うが、ポリゴン人間を配置しただけではだめで「ライトがこう当たる」とか「テクスチャー」をポリゴンに貼るとかいろんな作業があり、しかも、完成系(CG)を計算して表示するのに、俺のMacだと20分近くかかってしまった。で、「あ、ライトが弱すぎた」とか、数値を修正して、また20分待つ。こんなアプリ研究していて間に合うのだろうか……。そもそも「サウンドノベル系」を作ろうとしているのだから、「話」が肝心だ。CG実験に時間を費やしている場合ではない……。

そんなとき、「○○さん」の事務所に「Mac」がやってきた。かなりグレードの高いやつだ。

「藤江君、これも使いなよ。納期も迫ってるしね」

「○○さん」が用意してくれたMacでCG計算すると、7分くらいで完成系を表示してくれる。これはいいぜ! 当時のMacOSは、一つのアプリがフリーズするとほかのアプリも全滅ってくらいの危険性があったから、俺は自分のMacがCG計算しているとき、ほかのアプリを立ちあげることが怖くてできなかった。しかし、2台あるなら、片方はCG計算専用、もう片方はテキスト入力専用に使えるではないか。よし、やれる! エロゲーが作れる! さあ、あとはシナリオだ。「狂気」の名にふさわしい、ストロングな話を書いてやるぜ。そして、苦心の末、シナリオはできたのだが、また例の流通業者が……。

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