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#2: 「ウォーターフォールはどこに?」

進化を続けるディシプリンド・アジャイルの今を知るページ:番外編の2回目

 前回紹介したように、PMBOKガイド第7版からは、Web上のデジタルコンテンツを併用するように、PMIによる情報開示の方法が変わってきます。しかし、PMBOKガイドの、もっと以前のバージョンから関わってきた方々からすると、これまで必要な知識を粛々と蓄積してきたし(その結果が第6版の900ページ強に至る)、「頻繁にコンテンツが変わる」ということ自体に違和感を感じられるかもしれません。

そこで、今回は、ポイントの2つ目になります。

ポイント2)ウォーターフォールは、「数あるライフサイクルのうちの一つ」という位置付けになる。
…話を先に進めるにあたって、以下の図をご覧ください。

DAブログライフサイクル

私たちは、何らかの解決すべき課題や達成したい目標を掲げ(ここでは”ニーズ”とします)、それを解決あるいは達成するために、プロダクトやシステムといったものを開発し(”ソリューション作り”)、その成果物を利用することによって対価を得ます(最近の流行りに乗って、”アウトカム”と呼びましょう)。
※ニーズやらフィーチャーやら、要求管理をめぐる用語は手法によって色々ありますが、ここではバクっとイメージで捉えてください。

第7版の大きな変更点として、Prefaceでは以下のような記述が見られます。
            (※筆者が言ってるのではありません)
・第6版までは”プロセスベース(process-based standard)”だった
・プロスセスベースは、規定的(prescriptive)だった
・しかし、プロジェクトマネジメントの世界は急速に進化しているため、プロセスベースのアプローチでは、価値提供の全容を反映させることができない
・これからは”原則ベース(principles-based standard”)へ移行する
・「成果物ではなく、意図された結果(上図のニーズと、ソリューションの結果得られたアウトカム)に焦点を当てる」 
         (※繰り返しですが、筆者が言っているのではありません)

【アジャイル/DAの影響】
ウォーターフォールとアジャイルを比較する際に、よく言われるのが、不確実性や予測可能性の違いです。
・ウォーターフォールは、(アジャイルに比べれば)不確実性が低く予測可能性が高い→つまりしっかり計画を立てれば、ほぼその通りできてもおかしくないという前提。
それに対して、
・アジャイルは(ウォーターフォールに比べて)不確実性が高く予測可能性が低い→顧客や市場はダイナミックに、予想しきれない形で変わりうるという前提。

最近よく耳にする、VUCAやDX、ビジネスアジリティ等は、どれも後者の不確実性が高く予測可能性が低い中でどう適応するかを論じています。そのような環境下では、規定的であることには限界があります。平たく言えば、「何が起きるかわからない状況では、あらかじめ手順を事細かに決めても、そもそもその通りに周辺も含め物事が進まない。であれば、臨機応変さが必要」ということです。

もちろん、不確実性や予測可能性は、掲げている問題や目標によって、程度が異なる可能性があります。第6版までのPMBOKガイドでは、主たるコンテンツが”不確実性が低く予測可能性が高い状況下でのプロセス”を規定し、アジャイル関係は”おまけ”みたいな感じでした。が、VUCAやD…諸々がビジネス上の重要性を増してくると、アジャイルを”おまけ”とは扱えなくなります。ここでのポイントは、「…だから全部アジャイルで」ではなく、「アジャイルもウォーターフォールも選択肢であり、置かれた状況(文脈)に応じて、適切なものを選択することが大事だ」と見なしている点です。

このような”開発スタイルを文脈に応じて選択する”という考え方は、DAで提唱されてきた概念であり、DAでは(そして第7版でも)”開発スタイル”ではなく”ライフサイクル”と呼んでいます。ライフサイクルはしっかり説明しようとすると、それはそれでボリュームが必要なので、別途本編として(近々)記事化することにします。

アジャイルでは日々様々なプラクティスが生まれ、それが一般化していきます。それを逃さないためにも、Web上でのデジタルコンテンツでの情報発信は必要です(紙ベースではスピード感がありません)。ウォーターフォールは、アジャイルほど臨機応変さは求められないかもしれないし、Web上でのデジタルコンテンツの必然性は、もしかしたら薄いかもしれません。しかし、ウォーターフォールでも進化の余地はあるし、そもそも知識体系が「アジャイルはこっち、ウォーターフォールはあっち」と分散していること自体、使い勝手が悪いことこの上ありません。

「ウォーターフォールとアジャイル、どちらが主でも従でもない」というのが、第7版の捉え方のようです。

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勢いに任せて一気に2回分書いてしまいましたが、そろそろ気力が尽きてくる頃。3回目は、自分を鼓舞するためにも、「目次から”プロジェクトマネージャー”が消えた!?」を記事にしようかと思ってます(刺激が欲しい…)。

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