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なぜ多くのイラストは三点透視図法を使うのか? 【パース・消失点の解説】

イラストレーターのしのです。


絵の勉強をし始めると、いずれパースの問題にぶつかります。パースは理解出来れば便利なのですが、初心者にとってはかなり分かりづらいです。

特に、一点透視図法・二点透視図法・三点透視図法と消失点はかなり難しい。

疑問点は大体以下でしょう。

・消失点はどこに置けばいいのか?
・なぜ透視図法は3つもあるのか?
・どういう状況で使い分けるのか

僕もずっと悩んでいたのですが、最近colosoで勉強してようやく理解できたので、自分なりにまとめてみました…!


イラストでは三点透視図法だけ使えばOK

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まず、透視図法の大前提として、「イラストでは三点透視図法以外ほぼ使わない」ということを覚えてください。

一点透視図法と二点透視図法は成立する条件が限定的なので、イラストでは使いません。


これだけ覚えればもうOKです。

ただし、いきなり三点透視図法を理解しようとしても難しいので、どうして一点透視図法と二点透視図法はイラストでは使いづらいのかを順番に説明していきます。


一点透視図法

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一点透視図法とは、平面な場所に立方体を置いた時、地平線側にむかっていく全ての線は、地平線上の1点で交わる、という原理で遠近感を表現する手法です。消失点が1つなので一点透視図法です。

図で表すとこうなります。

一見これだけで奥行きのある絵を描くには十分に見えますね。ところが、残念ながらこれが成立するのはこのような条件のみです。

言葉で説明すると、見ている方向に対して垂直平行にマス目を区切った時、立方体はそのマス目に対しても平行である時のみ、一点透視図法は成立します。

もし、立方体の角度を変えた時、一点透視図法を使うとこうなります。

もう一辺はわざと平行にしています。この立体は歪んでいて、正六面体には見えませんね。このように少し物の角度をずらしただけで一点透視図法では上手く描写できなくなります。


イラストでは小物や建物全て正面を向いてることはほぼない(あったとしても堅苦しい絵になる)ので、一点透視図法では魅力的なイラストを描くには適しません。

そこで出てくるのが次の二点透視図法です。


二点透視図法

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二点透視図法では、一辺ではなく、縦横(x軸・y軸)それぞれの辺が異なる1点で交わります。消失点が2つなので二点透視図法です。

図で表すとこうなります。

この方法で先ほどと同じ立体を描くと、いびつだったものがちゃんとした立方体になります。この方法であれば、どのような角度で図形を配置しても、1つの図形に対して2つの消失点を作ることで問題なく描けます。

ただし、実はこれも「物体にあまり高さがない場合」にしか成立しません。

たとえば、極端に宙に浮いた図形を、二点透視図法で描こうとするとこうなります。

物体が天に近づくほど、形がいびつになっていきます。高層ビルや縦に並んだファンタジー建造物など、高さを重視したイラストでは、かなり違和感が残ります。


三点透視図法

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こうして、最終的に三点透視図法に行き着きます。

三点透視図法では、立方体を構成する全ての辺(x軸・y軸・z軸)が、それぞれ平行な線同士1点で交わります。消失点が3つなので三点透視図法です。

図にするとこうです。

x軸、y軸、z軸、全ての奥行きを表現することで、空間を正確に描写出来ます。

実際に使う場合は、高さの消失点をもっと極端に、画面外に持っていくようにすると、それっぽくなります。またほとんどのお絵かきソフトには『パース定規』という機能があると思うので、ぶっちゃけそれを使うと良いですね。


消失点の数は固定?

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透視図法が理解しづらいもう一つの要因が『消失点』です。

今までの説明から察することができると思いますが、消失点というのは、この透視図法を使う際に辺の延長が一点に集まった時の点のことを言います。一点透視図法では消失点が1つ。二点透視図法では2つ。三点透視図法では消失点が3つになります。


では、三点透視図法では、必ず消失点は3つになるのでしょうか?


答えは❌です。

通常、イラストにおいて消失点は、3つ以上現れます。


角度が変わると消失点が増える

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実は同じ3つの消失点で、正確に図形が描けるのは『全ての物体が平行に配置されている場合』のみです。

たとえば角度の違う物体が2つある時、消失点は6つになるます。3つに増えれば消失点は9つになります。

これは一見いびつな三点透視図法ですが、上にある図形は少し傾いていると認識すれば、それほど違和感はありません。むしろ程よい浮遊感を感じられます。

重要なのは、『平行に並んだ物体の消失点は同じ』ということで、消失点の数自体は無限に設定することができます。


ただ、勉強不足で申し訳ありませんが、3次元空間で角度の違う物体のパースを正確に表現する方法はわかりませんでした…。この消失点は自由に設定して良いのか、あるいは何か規則性を持って設定しないと違和感が出るのか…。

それでも基本的には、基準を一つ決めるだけで、説得力が増すと思います。


透視図法はあくまで表現の一つ

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ここまでをまとめると、要するに、透視図法というのは三次元を二次元で表現するための『単なる表現法』なのです。

カメラを通すと世界はこう見えるとか、空間はこのように出来ているみたいな、そういう科学的な正しい話ではなくて、「この法則で表現すると、正しく描写しやすい」というもので絶対ではありません。


その表現をとりわけ簡略化させたものが一点透視図法・二点透視図法・三点透視図法になります。


あくまで『簡略化』ですので、先程の三点透視図法すら、現実世界を完璧に再現しているとは言えません。しかしその方法で大抵のイラストでは空間を魅力的に演出できます。そのために使うのです。


透視図法を知っていれば説得力が増す

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ほとんどのイラストでは、背景すら描かないので、透視図法を使う必要すらないかもしれません。

実際僕はほとんど使いません。


しかし、ちょっとした小物や、椅子などの家具を置く時、三点透視図法を意識すると説得力が出ます。正確に描かなくても、知っておくだけで立体の描写に違和感が出た時解決法がわかるので、理解しておくと便利ですね。


ちなみに、実は今回紹介した三点透視図法でもイラストに違和感が出る場合があります。気になった方はぜひ三点透視図法で違和感が出る場合と、その解決法について、ご自身で考えてみてください。


今回は以上です。ではでは(。・ω・)ノ゙

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