てごトーク

てごト〜ク―制作秘話から文化系教育まで、妹と話してみた話

妹は昨年3月に美術学科の日本画コースを卒業して、今は会社員をしながら制作活動をしています。

これまではどんな芸術作品でも、「完成した作品」しか観たことしかなかった私ですが、初めてひとつの作品の制作工程を追ってみることに!


2018年9月、制作の現場に張り付きはじめて思ったのは、描き始めるまでの工程がめちゃくちゃめんどくさい!ということ。

妹はかなりめんどくさがり屋なのに、どうして日本画にしたんだろう・・・・

そうだよね。めんどくさいとは思ってるよ。
私は想像ではなく、観たものを作品にすることが好きで、絵画の方が、例えば写真に比べると構図とか視点も思い通りにできるから絵にした。
日本画の画材や手法と、自分の性質が合っているのかなと思う。

手順はこんなかんじ。


本紙に使う和紙にもいろんな種類があって、
鳥の子紙、雲肌麻紙、あさ麻紙・・・
など。紙の色や繊維が違うから、好みで選ぶよ。
雲肌麻紙は白くて雲みたいに紙の繊維がもこもこしていたり、鳥の子紙はひよこみたいに薄い黄色をしてるから、そういう名前がついてるんだよ。

へ〜!名前の付け方かわいい!

今回使った着彩用の画材は、岩絵の具と水干絵の具。

こちらが岩絵の具。

こちらが水干絵の具。

膠(にかわ)といって、動物の皮(コラーゲン)から作った糊で固めて、やっと紙や他の絵の具と接着するようになって、着彩ができるようになるんだ。

膠は、お湯で溶かして液状にし、先の岩絵の具や水干絵の具の粉に混ぜるんだよね。こちらが膠。

水干絵の具を少しずつ混ぜているところ。

岩絵の具は石を削った粉で、水干絵の具は貝殻を削った粉だよ。

全部自然のものからつくってるんだ!絵画って自然からできているんだね!

油絵も、植物に油を混ぜて固めて絵の具にしたものだし、
人間は古来から自然を利用して絵画をつくっていたんだね。

人間はそこまでして創造活動を続けてきたんだと思うと、本能的な何かがあるのか、すごく興味深いな。


こちらがやっと着彩できるようになった絵の具。
時間が経つと乾くので、膠を継ぎ足しながら使ってたね。

作品の背景はオレンジを塗ってから、白色を重ねたよ。

初めから白を混ぜたオレンジを塗ればいいんじゃないの!?

やっぱり最初に乗せた色が反映されるんだよね。
黒に白を乗せると黒っぽい色になるのと同じで。

はじめはこんなかんじでした。
(白色を乗せる前の状態。)

オレンジは水干絵の具、白は岩絵の具をつかってるよ。

水干絵の具は粒子が小さいから、上から岩絵の具(粒子大きめ)を乗せると剥がれてしまうの。だから、絵の具の粒子をザラザラさせるためにガラスをくだいた粉を混ぜて使ってるよ。
そうすると岩絵の具との密着度が高まる。

絵の具の粒と粒がくっつくようにとか、絵の具をはじかないようにとか、色々な道具を使って工夫してるんだね!科学だな・・・

日本画って先人の知恵がつまってるんだよ!!(興奮)
気温や湿度などの環境要因も考えて作られた結果だよね。

学校の授業では拾ってきた石を砕いて絵の具をつくったこともあるよ。

すごすぎる。本当に自然からつくってるんだ・・・


そうそう、部活も習い事もあんまり続かなかった妹なのだけど・・・絵は続いてるよね!

うん。中学校の美術の授業がすごい好きだった。
1年生のころの先生は、良い意味で教えない先生だから良かったな。
「考える」とか「発想」「観察力」を鍛えることができた。
2年生からは教える先生になったからあんまり楽しくなかったな・・・

そうだね。なんのために美術やるんだろうって思ってる人はいそう。

学校によっては、美術とか音楽とか、文化系の授業を義務教育でカットしようという話も聞いたことがあるけど、なくならないでほしいな。

あと、「こういう様に描こう」と指定される授業もあるみたいだけど、もっと自由な発想の授業をしてほしい。

義務教育で学ぶ芸術の意義を、先生も親も理解することが大事だね。

美術が好きになったのは、先生に喜ばれることが嬉しかったから。そのころから抽象よりも具象のほうが好きで、褒められてたな。

私も美術は好きだったはずだけど、あんまり覚えてないな。

お姉ちゃんはデザイン系のほうが得意だったイメージ。
文字のデザインとか、ケント紙に折り紙を貼っていく作品とか!

幼少期の好きとか得意とか、人生にすごく影響してるんだな・・・

完成した作品はこちらです!


私は仕事柄、バックアップは当たり前だし、間違えたらDeleteすればいいけど、絵画は前に進むことしかできない。その一筆、その瞬間の判断が作品になっていく。

作品の裏には、どんな絵にしよう、どんな大きさのフレームにどんな画材で描こう、どんな仕上がりにしよう・・・などたくさんの思考と技術がつまっているんだと改めて知ることが出来ました。

次回の展示会は今年の7月の予定。
また制作活動が始まるので、どんな作品が出来上がるのか楽しみです!

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