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ニッチマーケットで年金プラスの収入を目指すミドルシニア起業

 「起業」というと、若い世代なら「上場を目指す」とか「バイアウトして財産を作る」などと力こぶができる言葉かもしれない。しかし、ミドルシニア層の起業、とくに60歳が近づいてくると、大きな夢より、好きなことと自由を優先し、大きなリスクをとらずにやっていきたい。

 夕刊フジ「定年起業への挑戦」で取材した、民族楽器の輸入販売やメンテナンスで起業したAさんは当時64歳だった。メーカーで定年まで働き、いくつかの団体を経て、起業したのだが、その扱う楽器が、イラン発祥の「ハンマー・ダルシマー」、スウェーデンの「ニッケルハルパ」、アイルランドの「アイリッシュブズーキ」などマニアックなものばかりだ。まさにニッチマーケット。国内に1000名ほどしか愛好者がいないとのこと。

 しかし、ニッチマーケットゆえ、メンテナンスする人がいなくて、愛好者や演奏者は修理したい時は海外へ楽器を送るしかなかったという。大きな出費と手間だ。そこでAさんが立ち上げたのが、民族楽器のメンテナンスを行う工房だ。郊外のレンタル・シェア倉庫を借り、一角を工房にして作業しているそうだ。レンタル・シェア倉庫というのも使いでがありそう!

「そんなに大きく稼げなくてもいいんです。もうすぐ出る年金にプラスすれば十分にやっていけます」(Aさん)

 Aさんは大きなマーケットを目指すのではなく、ニッチマーケットで、ゆっくり、自由に好きな仕事をする老後(この言葉がふさわしいかどうか)を選択した。

 取材時64歳だったAさんは、すでに年金受給がスタートしているだろう。令和1年の公益財団法人生命保険文化センターによる「生活保障に関する調査」では、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考えられている最低日常生活費を調査したところ平均22.1万円(月額)ということだったらしい。

 都市部で夫婦二人がこの金額で毎月生活するのはなかなかむずかしいのではないだろうか。

 同調査では、経済的にゆとりのある老後生活を送るためには、この金額に加えて、あとどれぐらい必要かを尋ねている。そうするとあと平均14.0万円必要とのことだ。つまり、「年金プラス15万円収入を得る起業」を行うことを、ミドルシニアの、とくに退職後の起業の物差しにしてもいいのではないか。

 もちろんこの先、年金が65歳で支給されるかどうかわからない。また、現在の支給レベルがこのままキープされるかどうかわからない。貯金もあるかもしれないが、ストック資産を吐き出していくだけでは心もとない。起業、副業、転職など何らかの形で、年金プラス15万円のフロー収入を目指すというのもいいのではないだろうか。


人によって幸せの基準はいろいろ違うと思いますが、「仕事が楽しい」というのはかなり幸せの中でも大切なところにあると思います。どうしたら仕事が楽しくなるかを毎日考えてきた小さな会社の代表です。