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わたしは犬を飼っていない

2015年5月の第3土曜日、沖縄からその子はやってきた。

白と黒の牛柄ような毛並みの約600gの彼女にはじめて会ったとき、あまりの小ささと愛おしさでわたしは泣いた。
バレンタインデー生まれだった事とあまりに元気な子だったので、グリコと名付けた。
グリコと私は、それからほどなくして親友になった。

グリコはいつもわたしの帰りを待っててくれ、帰ってくると365日大喜びしてくれる。
わたしが逆の立場だったら、365日大喜びしてあげられるだろうか。
グリコは本当にすごい。

グリコは毎日同じご飯なのに、毎回とても美味しそうに食べてくれる。
わたしだったらきっと同じものに飽きて文句を言っているだろうに。
グリコは本当にすごい。

グリコはわたしが夫とケンカをして泣いていると、涙を一粒のこらずキレイに舐めてくれる。
まるで初めから泣いてなかったかのように。
そして、泣いているわたしの横に寄り添い
「お腹をなでて〜」と、変な格好をして笑わせてくれる。

グリコは本当にすごい。

将来、子供を持つことが怖いと思っていたわたしに、誰かに必要とされることの素晴らしさと無償の愛を教えてくれた。
わたしが子供を持ちたいと妊活を始められたのはグリコのおかげだ。
グリコは本当にすごい。

わたしがグリコに教えたことなんて、トイレの場所やお散歩だけなのに。
グリコから教わったことは数え切れない。
駆け引きや計算高い傲慢さは1ミリもなく、いつも一緒にいてくれる。
グリコってやっぱりすごい。


わたしは犬を飼っているんじゃない。


親友と生きていくんだよな。


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