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校正という仕事【1】校正者になりました。


つい最近、新しい仕事を始めた。
校正の仕事だ。

そうなんです。私、校正者になりました。

塾の仕事を辞めて金沢に帰ると決めた時、次は校正の仕事がしたいな、と思っていた。就活時代に全滅だった出版業界への未練や怨嗟も、どこかしら影響していたのかもしれない。当時は出版に詳しい人でもない限り「コウセイ」と聞いてもピンとくる人は少なく、私の今後に興味を持ってくれた先輩や友人にも、イチから説明する必要があった。その説明すらも楽しく、しかも聞いた人からも「すごいね、その仕事」と言われ、塾関係者でさえ「めちゃくちゃ頭使うじゃん」「かなり広範な知識がないとできないね」なんて感嘆していて、なんだか鼻高々だった。

だからこそ、その時じゃなかったのかもしれない。私が校正者になるべきだったのは。

忘れていたわけではないけれど、日々の業務に忙殺され、目先の収入を得るのに必死で、その密かな目標は頭の片隅の、一隅のその先の、もっともっと奥の方へ押し込まれたまま、長い年月が経っていた。
乳がんになって、年単位の休養が必要になった反面、自分の今を、これからを、じっくりとことん考える機会にも恵まれた。
仕事への意欲が湧いてきたのと同じ頃、試しに受けていた『職業適性検査』の結果が返ってきた。
校正能力を示す「書記的知覚」で満点、「言語能力」でも県内の過去最高得点を記録したと、ハローワークのお兄さんがやや興奮気味に解説してくれた。
「今こそ、その道へ行け」 —そう感じたのは、言うまでもない。
 (※職業適性検査は45歳以下の方なら誰でも受けられるそうです。気になられた方はお近くのハローワークへお問い合わせを…)

校正というと「間違い探しでしょ」という人がいるらしい。そう聞く度に、じゃあやってみたら?と思う。実際、そうやって軽く見る人に限って、ろくな仕事ができなかったりする。まぁ、どんな世界でも、だけど。

私が取り組むことになったのは中学国語教材の校正の仕事。
校正、とひとくちに言っても、タイプミスや文の乱れを直すだけではなく、読みや書き取り問題で出題されている漢字は既習かどうか、出題されている漢字が他の箇所に記載されていないか、文章中の未習の漢字にルビは付いているか、原典から正しく転記されているか、正答以外の選択肢も正答になり得ないか、模範解答は正しいか、解説はわかりやすく伝わるものになっているか…等々を、総合的にチェックする必要がある。つまりは「内容校正」であり、一般の書籍でいうならば「校閲」に近い。
リアル校閲ガールに私はなった、というわけだ。
ドラマ、見とけばよかったかな…キャストがアレだったので見てなかったけど笑 とりあえず小説で読もう、うん。

そんなわけで、教材の校正には学習塾勤務経験が大いに役立つ。そもそも教材の出版社では、採用条件に教師経験か講師経験を掲げてあるところが圧倒的に多い。
校正職、特に在宅校正の場合は、出版や広告業界未経験の者にはかなり狭き門なのだが、教材の校正なら、教えた経験さえあれば出版業界に入り込むことができる。まずは教材校正から入ってキャリアを積み、一般書や専門書へと幅を広げていく人が多いらしい。
そして正確で迅速な仕事を積み重ねていけば、そのぶん単価も上がっていく。
完全に実力主義の世界だ。
マジ燃える。マジ震える。

なにより、大好きな文字に触れることができて、大好きな言葉に溺れることができて、そのうえ国語力も上がって、書く文章にも好影響を与えられるのだ。
歴史上の大作家にも、大成する前は新聞社等の校正職として働いていた人が何人もいるという。
私にとってこんなに願ったり叶ったりの仕事が他にあるだろうか…!
Oh,ジーザス!!

しかも、必要以上に人との交流がないってところも、すこぶるイイ。

昔から、言葉の間違いには敏感なほうだった。
市販されている書籍に誤字脱字や文のねじれを見つけると、ふざけてんのか、と人知れず憤慨した。
出版界には「初版本は買うな」という言い伝えがあるそうだけど、果たして一般消費者は「あぁ、初版なら仕方ないよね」となるだろうか。
誤字脱字の本の裏表紙をめくり、それを犯した出版社名を確認したのは何度に及ぶだろう。
あの大手出版社も、あの大企業も、平気でミスをする。ミスしたものを、そ知らぬ顔で売る。
あり得ない。
車なら即リコールだぞ。

間違った知識のまま定着してしまったら、人生の選択肢を選び間違うことも、場合によっては命に関わることもある。
ひと文字の重みに、もっともっと慎重になるべきだ。

で、そんな私を、言葉にこだわりすぎていて
「コワ〜イ」
と言う女がいた。
それもあり得ない。
というか許さない。
ちゃんと謝ってくれるまではね。

自分の今とこれからを考えて、在宅でできる仕事をずっと模索していた。
かつ、こうして文章を書くことや他の好きなことをするのに支障にならない仕事—自分で時間管理ができて、カラダにもココロにも大きな負担にならない仕事—を探していた。
それを叶えてくれるのが、他でもない、かねてから希望していた校正職だった、というわけだ。
なんだか校正通信講座の謳い文句みたいだけど。

誰もが児童・生徒時代にお世話になったであろう大手教育出版社に、この度、在宅校正スタッフとして雇ってもらえることになった。
皮肉にも、就活時に全滅だった出版の世界に、十数年経った今、受け入れられることとなったのだ。

採用試験には校正テストというのがあって、実際の業務と同じ作業を求められた。
これにはかなり、かなり気を遣った。
神棚へのお供え物を扱う時のように、身を清め、気を引き締めてから取りかかった。
中断して再開する時も、同じようにした。
とはいえそこまで気配りしたのは2社めの時で、不採用になった1社めの時はそこまでしなかった。それが合否を分けたのかもしれない。
無論、あの職業適性検査の結果もしっかりアピールした。
出版業界での経験はないけれど、塾の次に就職した公的団体で、規程集やポスター、カレンダー等の校正に7年間従事したことも、ついでにアピールしておいた。
資格検定マニアで日々研鑽に励んでいることも漏れなく伝えた。
次代を担う子どもたちへの思い、出版物によって知性と情操を培う人たちへの貢献、さらには国語力を基盤とした総合力の上昇によって日本の未来を幾久しく輝かせる、その力になりたいという情熱も、文字どおり熱く伝えた。
遠隔でのペーパーテストと書類選考だったから、もちろん紙面の文章で。
…ちょっとウザかったかもしれない。ヤベェやつだったかもしれない。
でも就活にしたって恋愛にしたって人生そのものにしたって、どうしても勝ち取りたいものがあるときは、ちょっとぐらいイタイやつのほうが、思い通りの結果をその手に掴んでいる。
印象に残ってなんぼだ、という考え方は、命が助かって開き直った後の自分だからこそできたのかもしれない。

というわけで、あなたの文章、校正します。
ビジネス文書、自己PR文、サイトに掲載する文章から、御礼状、ラブレターに至るまで、あなたの思いが存分に伝わる、かつ正しく美しい日本語の文章をご一緒に作り上げましょう。
【ご注意】あくまで、あなた自身が考えて書いた文章を、当方が校正・添削し、一緒に推敲して仕上げる、という契約です。
当方が一から文面を考えることはいたしませんこと、予めご了承ください。
ただし、思いは溢れているし内容も浮かんでるんだけど、どうも文章が苦手で全く整わない!といった場合などは、別途ご相談に乗ります。

※現在、新規案件はお請けしておりません。
 あしからずご容赦くださいませ。


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