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余談「小説のハコ書き」

小説『BLOOD♯』のハコ書き

2017年2月28日に発売された小説『BLOOD♯』は、TVアニメ『BLOOD+』の続編と言う形で監督・シリーズ構成を務めていた自分が執筆。

企画としては夏前くらいに小説執筆の許可などを取り付け、夏の記念イベントで発表、アニメの外伝的な音楽朗読劇もあったりして、そこで先行発売しようという予定で進んでいたのでデッドエンドが決まっていた仕事でした。

今回はそれをどうやって書いていったかを工程順で紹介していきます。

執筆は10月頭から細々と物語の流れを考え始め、10月19日に大筋の物語の流れがイメージ完了。
この時点で全体的に二人のヒロイン、響と奏、二つの視点で物語を語る流れをイメージ。
アクティブなアクションを響に、物語の根底にある設定的なミステリーを奏に振って最後に合流させる構成に。

この段階ではざっくりとふたりの物語の流れと重なったところからの展開とに分けてあらすじを作って編集さんにお渡し。
分量はA4のWORDファイルで14ページほど。割りと文字量多め。
(この段階では本編と異なる展開もあります)

次に実際の構成に合わせた形で全体の配分なども考えつつ、プロットにしていきます。
どちらかと言えば、メモというかハコ書きに近い感じかもしれない。

――で、この時期、11月5日に舞台となる福生界隈をロケハン。空気感を掴んだ後、実際に冒頭のあたりの小説本編も進めて感触を確かめつつ、全体の構成を練り直す作業に。
おおまかに二人のヒロインの視点で物語の流れを作るわけだけれど、ザッピングしていかないと読んでいる人たちが登場人物の存在を忘れてしまうことになるので、その切替のタイミングを図りながら構成する感じで作成。

 *響サイド、奏サイドのふたとおりの物語が平行軸でザッピングしながら進みます。
 *構成は全9章くらいにします。
響(1)――失われた日常。アダムの登場。
奏(A)――退屈な日常が傾き始める。
響(2)――逃避行とシュヴァリエの誕生。
奏(B)――横須賀。語られる真実。信じられない奏。
響(3)――人ではない力。自らの手で切り開こう。そしてひとりに。
奏(C)――ドイツ篇。秘められた過去。
響(4)――ひとりで沖縄をいく。未来をこの手で切り開く決意。
奏(D)――過去を受けて。ふたりの未来を探ろう。
響&奏――最後の死闘。そして目覚める女王。
◯響サイド……援軍のない中、超人的な人工翼手の追っ手から逃避行を続ける音無響とシュヴァリエとなるアダムの、沖縄を目指す逃避行の物語。
主にアクション篇。
◯奏サイド……赤い盾に守られながら、襲撃者の謎と過去『ドイツ篇』からつながるボルマン文書を追う追跡者視点の物語。BLOOD+につながるキャラクターたちが登場します。
主に推察篇。
◯ふたりの女王……響と奏が合流を果たし、本当の敵と向き合う最終エピソードです。

『BLOOD♯』プロットから

このメモ書きのあとに実際の細かい内容がついてますが分量が多いのでそれは省略。(1万字くらいありますし)

で、この内容を元にページ数をイメージして内容を整理。
それが以下の感じに。

**00・ディーヴァと響と奏 (2)
・ディーヴァが赤ん坊のふたりに語りかける言葉。

**01・響がアダムに会う (30)
(一日目)
・横田基地近くで暮らす音無響。高校までの道を自転車で行く。基地のある町は沖縄に似ていて好き。
・早朝の学校。陸上部で走る。誰もいない場所は心地よい。周りに溶け込みたくない。
・自分自身が他人と違うこと。意識している。自分を見ている人物。青い目の男の子――アダム登場。
・ホームルーム。五嶋ミノリ。謎の薬の噂。転校生の登場。またも自分を見ている。デヴィッドと名乗る。
・放課後。おとなしく目立たないように部活する響。部活でも薬のこと。自分を見る視線。デヴィッドだった。
・自転車置き場。またもデヴィッドがこちらを見ている。やだなと思いながら帰る。
・夜。自宅のOMORO。ルイスが来ている。カイの登場。ナンクルナイサ。
・奏の登場。過去の大怪我のこと。(詳細ふれずイントロ)。輪に入れない響。
・アダムという金髪の男の子のこと――。たいせつな約束をしたのに――。
(二日目)
・翌日。学校。早朝。またもデヴィッドが見ていた。
・ホームルーム。デヴィッドが気になると発言。クラスが沸き立つかと思いきや事件。
・学校で暴れる学生。薬きめてた?とか噂。米兵から流れてきた?とか。
・部活は中止。一斉下校。響を見ているデヴィッド。言い返すが迷惑と逆に返される。
・夕方。OMORO。奏が出かけるところ。自分自身の身の置き場所、ここにはない。
・響を見つめる黒い影。ハジ? 敵?

『BLOOD♯』ハコ書きから抜粋

冒頭の部分だけですが、こんな感じで内容を箇条書きで整理していきます。

**01・響がアダムに会う (30)

――文末の(30)は30ページくらいかな?
という感じのページ割です。
実はイラストなどの発注もあるので、台割をある程度決めておく必要もあり、内容が書けたところでイラストを書いていただいた箸井地図さんに原稿データをお渡ししていたので細かく考えていました。
それと、全体的にアバウトになっています。
脚本にするときはここから更にハコ書きを細かく作る場合が多いのですが、小説なので書いてるときの「ノリ」を第一に考えてあまり詰めることはしませんでした。
この段階では本編で内容を変えたところもかなりあります。

こんな感じで最後まで構成を作りつ、小説本編のデータを書き進め、なにかあったらこのハコ書きに戻って再整理し、ハコ書き自体は11月21日に固まりました。

続き少しだけ載せていきます。

**02・奏のこと――ふたりの距離感。 (24)
(2月1日16時)
・立川。町のノイズのこと。学校の友だちとの約束。将来の夢。歌を歌いたい。
・ヨコチの陰謀。よくない噂が最近あるケンジと一緒。薬? 帰ろうとする奏。
・奏のピンチ。奏、逃げる。追いかけてくる悪漢。何者かに倒される。ネイサン?
・反体制的な存在。
・OMOROに戻った奏。平然として。カイとの会話。カイが好き
・寝ている響。一番振り向いてほしいのは響。
(2月2日8時)
・翌日。響はもう学校に行っている。奏も学校に。
・学校でヨコチと会う。謝られる。さっぱりしてる奏。県立高校で暴れた生徒の話。
・心配する奏。放課後の町。おかしな声。胸騒ぎ。
・自宅に帰る奏。家を見つめる謎の影の存在。
(24)

**03・響に降り掛かる事件――学校帰り・ハジ登場?>何となく分かる程度。(24)
(2月3日5時)
・学校に行きたくない雰囲気。カイから休めと言われるが行く響。
・学校に来た響。昨日のことで全校集会。教師のひとりに呼ばれて。
・教室に向かう響。途中で現れた黒衣の男。なにこのひと? 「逃げろ」と囁き。逃げ出す響。
・教室にこもるともうひとり生徒。ミノリ。様子がおかしい。襲われる。助けたのはデヴィッド。
・デヴィッド。銃を持っている。そこからも逃げる響。体育館。生徒たちが皆おかしい。
・逃げられないか? デヴィッドが連れだして。学校から逃げる。バイクを盗むデヴィッド。
・追いかけてくる謎の人間たち。チェイス。デヴィッド逃げる。
・地下道に隠れて。なんとかやり過ごす。OMOROに帰りたいというが帰れないと説得。
・夜になってOMOROに向かうが、そのOMOROは焼けていた。
・謎の黒服たち。逃げるデヴィッドと響。
(24)

**04・奏――帰ってこない響、襲われるOMORO。ネイサン遭遇。(32)
(2月3日10時)……少し時間遡る。
・家にいる奏。生理とかいってズル休み。謎の声聞こえてきて。その声に導かれるままに表に出る。
・ネイサン(名前はまだ明かさない)の声。はなれたところから「逃げろ」
・家に突っ込んでくる車、家が炎上。カイが死んじゃう!と慌てる奏。
・奏たちが狙われる背景。反体制派。テロリストの疑い。いま世界を騒がせている無国籍集団。
・その一味として認識されているカイ。
・公安を名乗る警察の襲撃? カイ、行方不明。
・混乱の中、奏は別の組織に保護されて――。
・君たちは騙されている。――君たちが親だと思っていた人物が本当にその人物なのか?
・君たちは誘拐されている。騙されてるんだ――と言われる。赤い盾を名乗る人物たち。(嘘)
・沖縄からなぜ東京にまで来たのか。彼らは赤い盾から君たちを奪ったからだ。ようやく探し出した。
・もうひとりが危ない。
・奏、響を救いたいと思う。響は敵の人間に騙されて逃走中だ――と。
・横須賀に待っていた船。ここで待つ。いったいなにが起きているのか。
・奏は聞かされる。お前たちは狙われている――と。
(32)

とりあえずこれで全体の3分の1くらい。
(気になった方は本の方を読んでくだされば)

そして小説本編の初稿が12月20日に完成。
約11万5千文字でした。

最初のプロットが1万字なのでだいたい10倍になった感じです。

他の仕事(2016年冬~2017年春はアニポケ、よるのないくに2、ポポロのアプリゲー、ピカイアのアフレコ、火星ゾンビ執筆、アトム・ザ・ビギニングのノベライズの作業が重なってました)も並行して作業していたこともあって、空いた時間を使ってこの小説を書いていたので、時間は少しかかりすぎてるかな?と思います。

『BLOOD♯』は自分で書くと決めて始めた仕事なので自分で管理して進行する必要もあり、並行作業だったのでスケジュールを多めに取れたのがよかったです。
実際にこの本の初稿を投げた後、年末年始で『火星ゾンビ』のブックブラスト版をクラウドファンディング版から加筆修正、更に『BLOOD♯』を書き終えた直後から『アトム ザ・ビギニング: 僕オモウ故ニ僕アリ (ガガガ文庫)』を一ヶ月半で校了する進行があったので息が抜けなかった冬~春でした。

兼業で商業小説を書かれる方の参考になればと思います。

――以上、本日の余談でした。
次回をお楽しみに。




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