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ミニチュアピンシャーのノイモーント1

わたしはミニチュアピンシャー。
ペットショップではミニチュアピンシャー ♀ と呼ばれている。
誕生日は2019年8月29日。
お母さん達と一緒にいた日はもう遠い昔。
ある日、お母さんから離され、いろんなところに運ばれて、それからペットショップに連れて来られた。
ここは第二の故郷だ。

新月のある日。

わたしが透明ケースの中で寝ていたら、店員のお姉さんに抱っこされ、人間に化けた太っちょ猫に渡された。
太っちょ猫はいい匂い。
肉の壁をよじ登り、沢山キスをする。唇を舐める。挨拶だ。
匂いを嗅いで興奮していたら、少し漏らしてしまった。太っちょ猫の服が濡れる。でも太っちょ猫は怒らない。あらあらという顔をして笑ってる。
太っちょ猫はリュックを買って、私を入れた。
暗いし揺れるしおしっこは漏れるし。
くーんと泣いていたら、太っちょ猫が網目の所を撫でた。太っちょ猫の匂いを嗅いで安心する。
でもどこに行くのだろう。
遠い電車の旅をする。揺れてゆれてガタゴト揺れて。
新宿駅に着いたら別の声がする。
網目からそっと覗いたら、太っちょ犬がいた。太っちょ犬も人間に化けている。

リュックが床に降り、やっとファスナーが開いた。
太っちょ猫と太っちょ犬がいる。
太っちょ猫が「私達が君のご主人様だよ」と言った。
主人。いい響きだ。
「ここは君の家だ」
そう太っちょ猫は言った。
わたしの名前は新月のドイツ語読みであるノイモーントになった。
今日、新月で興奮した太っちょ猫が長旅をしてわたしを連れにきたらしい。
まだ来ないゲージを夢見ながらノイモーントは眠る。
沢山、部屋の中を走り回ったら疲れた。
お休みなさい。ご主人様達。

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