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「自分さえよければいいの?」のどかとダルイゼン【ヒーリングっど♥プリキュア全話視聴後感想】


2020年に新型コロナウイルスの影響で放送が休止するまで見ていて、その後なんとなく視聴をフェードアウトしてしまっていたヒーリングっど♥プリキュア!をやっと全部見たのでその感想について書きます
ネタバレでしかない感想なので未視聴の方はご注意ください
あと自分の記憶のみに基づいて書いてるのでセリフや場面描写の説明などは実際の作品との相違が絶対にありますごめんなさい!!!

のどかとダルイゼンに対する第一印象

のどかはやっぱり(その背景を知ってもなお)優しすぎる、献身的すぎるところがちょっと引っかかっていて、子供向けアニメに向かってこういう言い方はほんとによくないけど
意外と歌舞伎町でホストにはまってしまうような女の子ってのどかみたいなタイプが多いんじゃないか…
という気がしてしまっていた
あと序盤で、自分に住み良い環境を作るために地球を蝕もうとするダルイゼンに向かって言った
自分さえよければいいの!?
という言葉の正義が強すぎる気がしていてそこも少し引っかかっていた

一方ダルイゼンについては、えっ、なんか…プリキュアの悪役なのに…キャラデザイケメンすぎじゃない!?!?プリキュアを見ている女児達の初恋がダルイゼンになっちゃったらオタク人生が狂うど!!!!!
というこの第一印象すら物語の伏線だったことに気づくのは最終盤

ダルイゼンはのどかの中で育って排出されたビョーゲンズだ、ということがこの時点で判明していた背景があり、キングビョーゲンによって弱体化されていたダルイゼンはのどかに頼む
回復するためにお前の体内で自分を匿って欲しい、このまま死にたくない

助けを求めるダルイゼンの手を振り払ってしまうのどかに、ダルイゼンは
「自分さえよければいいのはお前だろ!!」
とのどかに意趣返しする

浮かない顔をしているのどかに「もしのどかが助けたいんだったらダルイゼンを助けても良い」というラビリンにのどかは
「助けたくない!ビョーゲンズによって引き起こされた病気で入院していた頃本当に辛かった、もう二度とあんな思いはしたくない」
ということを伝えるとラビリンは
「助けたくないなら全然助けなくていいよ、別に助けなかったとしてものどかはなんにも悪くないよ」
ということをのどかに伝える
結果、本当にのどかはダルイゼンを救わず、ダルイゼンはキングビョーゲンに取り込まれる形で消滅する
(この戦闘シーンで「身体を貸してって…いつまで!?」など怒涛の正論詰めパンチをダルイゼンにかまし続けるのどかがかなり痛快おもろでよかった)

善の存在として描かれるプリキュアや、引いてはそのプリキュアに対して自己投影しているであろう子供達に
「助けなくても良い。自分が嫌なら自己犠牲してまで他者を助けなくても良い。仮にそれが過去の自分の発言を反故にしてしまうものだとしても、どうしたいかは今の自分が選んで良い
をこんなにも真っすぐに伝えられる大人達が日本に存在しているということに、大人の私が泣きそうだった
プリキュアの制作陣は本気で女の子をはじめ子どもたちを救って守ろうとしている

その「救わなくても良い」というストーリーが他でもないダルイゼンとのどかの関係性の間で起こったのは、プリキュアなりの性教育だったんだろうなと思った
プリキュアの敵役の割にイケメン造形すぎる、思わず手を差し伸べてみたくなるダーティな魅力とちょっと可哀そうな感じ
たぶんそういう性質を持ったダルイゼンに惹かれてしまうような子ほどにこの物語が機能して欲しいと私も祈ってしまう

自分の身体と心を一番大事にして良いと知ること
それが一番大事な最初の性教育だと思う
大人ですらそれができていない(そうしてはいけないと今でもなお思い込んでしまっている)人がたくさんいる世の中だから

そして最終話では「人間もまたビョーゲンズと同様に、自分の住み良い星にするために地球や他の生物が生きる環境を蝕んでいる存在だ」ということが描かれた

こうやって全話通して見てみると、ヒープリって結構アンチヒーロー寄りの作品だったんだなと気づいた
思えば戦闘シーンの最後もいつも「成敗」ではなく「お手当て」「浄化」として描かれていて、敵達もヒープリたちにお手当てされると幸せそうな顔で消えて行っていたし
「正義のために望まない自己犠牲をしなくても良い」と説くことも、「ビョーゲンズと共に人間もまた他の生物にとって完全な善なる存在ではない」ということも、王道ヒーロー・ヒロイン物で目をそらされがちなところを最後までしっかり捉えようとし続けてた作品だったな

新型コロナウイルスの影響で話数が大幅に縮小したり色々トラブルにも見舞われた中、それでも全力を尽くしたということがよく伝わってくる作品だった
でももし話数が削られてなかったらどんな物語になってたのかも見てみたかったな~~
「ここはもうちょっと時間をかけて描きたかったんじゃないかな」っていうエピソードも結構あったし、ちゆとひなたもアスミもまだまだ内面の掘り下げの余地があった気がするし

そして物語は翌期のトロピカル~ジュ!プリキュアへ…