[カバー漫才] 夢路いとし・喜味こいしがかまいたちの名作漫才「タイムマシンがあったら」をカバーしたら…

くだらないことにタイムマシンを使おうとするいとしさんと,「それはもったいない」と諭すこいしさんのやりとりをお楽しみください。
オチの分類間抜けオチ

当て書き:夢路いとし・喜味こいし

こいし:実は私ね,今ほしいものがありまして…

いとし:ほしいもの?

こ:はいはい

い:「ほしいもの」というと?

こ:タイムマシン

い:今君が一番ほしいもんはタイムマシンか

こ:タイムマシンが一番ほしい

い:確かに我々そろそろタイムマシンがほしくなる年頃やけども…

こ:そんな年頃あるか?

い:還暦過ぎたらだいたいほしくなる

こ:それは個人差あるけど,タイムマシンで過去に戻れたとしてや,もしも何か一つだけやり直せるとしたら,やりたいことがあんねん

い:何したい?

こ:漂白

い:え?

こ:漂白

い:昔にひどく汚した洗濯物白くしたいんか

こ:漂白違う。自白

い:やっと過去に犯した罪を認めるんやな

こ:「やっと」てなんや。自白やなしに,あの〜年末になると歌を歌う会あるやろ?

い:歌を歌う会?忘年会か

こ:あれは「会」やないな。「戦(いくさ)」か

い:「戦(いくさ)」て,紅白歌合戦のことか

こ:それや!

い:あれは言うほど戦わんけどもやな

こ:紅白!紅白やない。こく白。告白や!

い:スッと言え,スッと…って逆やないか,ボケとツッコミが。僕の十八番のボケ盗るやつがあるか

こ:私もこれいっぺんやってみたかったんや

い:確かにこれは気分ええもんやから。なんの話してたか分からなくなるという欠点はあるけど…

こ:「もしも過去に戻って一つだけやり直せるとしたら何をするか」っちゅう話や

い:君は告白したいんか?

こ:私は告白したい

い:誰に?

こ:彼女に

い:「彼女」て,君はいくつや

こ:今の年齢は関係ないやないか。学生時代に戻って告白するんやから

い:このままの姿で戻るんと違うの?

こ:このままの姿で学生に告白したらえらいことなるやろ

い:捕まって取り調べられて自白せなあかんな

こ:「自白」の話はもうええ。「その時代の自分になって,もう一度何かをやり直せるとしたら」っちゅう話やがな

い:そういう話か

こ:君なら何する?

い:僕はね,ポイントカードを作る

こ:なんて?

い:ポイントカードを作る

い:なんの?

い:コンビニの

こ:買い物するたびにポイントが貯まるあれか

い:君は,一番最初に「ポイントカード作りますか?」と聞かれた日のことを覚えてるか?

こ:覚えてるか,そんなもん

い:僕はあの日,なんとなく断ってしもうて…

こ:まぁまぁそれはよくあるこっちゃ

い:そこから毎回「ポイントカード作りますか?」と聞かれてもやな,「今作ったら今までのポイントなんとなく損した気分になる」思うて,意地張って,結局いまだにポイントカード作れてないんですわ

こ:その気持ちは分からんでもないけど

い:このままやと一生ポイントカード作れんということやろ?

こ:それは君次第やろ

い:せやから,最初に「作りますか?」と聞かれたあの日に戻って,「はい!作ります!」,こう言いたいわけや

こ:それはもったいないやろ

い:ポイントがやろ

こ:違う。タイムマシンの使い方がや

い:タイムマシンの使い方がもったいない?

こ:タイムマシン使えるたった一度のチャンスを,ポイントカードを作るために使うなんてもったいない言うてんねん

い:それやったら君のほうがもったいないやないか

こ:何が

い:「学生時代に戻って告白したい」なんてたま〜にしか思わんと違うか?

こ:何年かにいっぺんか,何十年かにいっぺんやな。そないなこと思うんわ

い:僕は,「あの日ポイントカード作ってたらな」て,レジに行くたんびに思うんやから

こ:それやったら今すぐカード作ったらええやないか

い:僕はやな,10年以上もコンビニで毎回お弁当二つレジに持って行って,「こっちチンして,こっち捨ててください」言うてる客みたいなもんやで

こ:……

い:あえて分かりにくく説明したんやけども…

こ:何をしてんねん君は。普通「例え」っちゅうのは分かりやすく説明するために使うもんや

い:それやのにここへきて,急に「こっちのお弁当も捨てません」言うたら店員さんに変な目で見られるやろ

こ:その変な例えはもうええわ。あのな,誰も君がポイントカード作るかどうかなんて気にしとらんから。今作らんと今後のポイントがもったいないことなんねん

い:もったいないんは君のほうやて

こ:だから何がや

い:学生時代に戻って告白して,失敗したら何も残らんやろ。僕にはポイントカードが残るんですわ

こ:失敗したらそやけど,当時の感触やと,告白してたら確実に成功してたわ

い:それはない

こ:なんでや

い:確実やったら当時告白してたやろ。確実やないから告白しなかったん違うか?

こ:それは…,いろいろあるわいな

い:図星やな。ふられる可能性高いのにタイムマシン使うんはもったいない

こ:「確実や」言うてるやないか

い:世の中に「確実」なんてあるか?

こ:それやったら君かて,過去に戻ったからといって確実にポイントカード作れるとは限らんやろ

い:作れるやろ。向こうが「作りませんか?」言うてきてるんやから

こ:「世の中に『確実』なんてあるか?」言うたのは君やないか

い:「恋の話」と「ポイントカードの話」を一緒にするやつがあるか。それに告白して成功したとしてもや,それによって未来が変わって,今出会ってる人と出会えなくなってもええんか

こ:それを言うんやったら,もしもポイントカード作るの成功したとしてもや,それによって未来が変わって出会えなくなる人もおるかもしらんやろ

い:おらんやろ

こ:おらんか?

い:君,反論がズレとんねん

こ:ズレとるのは君のほうやないか。もしも過去に戻れたらポイントカード作るとか,もし告白できても失敗するとか,「もしも,もしも」て,君は現実からズレとんねん

い:「もしもタイムマシンがあったら何する?」と言い出したんは君やないか!

こ:……。ほんなら現実にできることを言おう

い:そや。現実的な話せえ

こ:君は今すぐポイントカードを作って,ぎょうさん買い物して,ポイント貯めて,過去にポイントカードを作っていたであろう君が貯めていたであろうポイントに追いついたらええ

い:今の僕が買い物して貯めたポイントは,過去にポイントカードを作っていたであろう僕のカードのポイントにも加算されるわけやから,今の僕がぎょうさん買い物してポイント増やしても,その分過去にポイントカードを作っていたであろう僕のポイントも増えるわけやから,一生追いつけんやろ

こ:あのな…,「過去にポイントカードを作っていたであろう君」というのは現実には存在してないんやから,今の君がぎょうさん買い物してポイント増やしても,その分過去にポイントカードを作っていたであろう君のポイントが増えたりはせんから大丈夫や

い:君は何を言うとんねん

こ:とにかく,今すぐコンビニ行って,ポイントカードを作りなさい。私が言いたいんはそれだけや

い:それだけ?

こ:それだけや

い:ここまで散々ああでもないこうでもない言うといて,今日言いたいんはそれだけなんか

こ:それだけや。君は今すぐポイントカードを作りなさい。みんなそう思うとる

い:「それだけ」て,これまでの議論はなんやったんや。あ〜もったいない

こ:「もったいない」て何がや

い:時間がや

こ:「時間がもったいない」言われてもやな,散々議論した末にそういう結論に至ったんやからしゃあないやろ

い:ほんま時間の無駄やった。「もしも」の話ばっかりさせられて。時間泥棒か君は

こ:分かった分かった。返す

い:何を?

こ:時間を

い:どやって?

こ:今からタイムマシンに乗って4分前に戻ってやな,私が「ほしいものがありまして」言うて,君に「『ほしいもの』というと?」と聞かれても,「タイムマシンがほしい」と言わんようにするから,そしたら「もしも」の話もせんでええやろ

い:それやったら,あの日に戻ってポイントカード作るわ

こ:それがええ

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オチは落としたいタイプですが,落し物は拾いたいタイプです
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藤澤俊輔 (漫才作家/オチ屋)

2012年よりフリーの漫才作家としてネットで漫才台本を販売。プロの漫才師や落語家の方にも台本を提供。これまで台本を100本以上書いています。劇団によって演劇化された台本もあります。一生使える漫才台本を書きます(永久無料のアフターケア付) 漫才をこよなく愛する人を探しています

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