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漫才論| ¹¹M-1を"競技漫才"にしたのは誰❓

「M-1は競技漫才だ」とよく言われますが,M-1の審査基準は"とにかくおもしろい漫才"です。この唯一の審査基準には,競技漫才的要素はいっさい見あたりません。「とにかくおもしろければどんな漫才でもいい」という意味です。実際,M-1チャンピオンの漫才に対して「あれは漫才なの?」という"漫才論争"が起こるほど,ゆるい基準です

ですから,M-1は"競技漫才"として存在しているというわけではなく,演者がM-1を"競技漫才"にしているという側面があると思います

競技化によって失われた"楽しみ"

漫才が競技化されることによって失われたのは,「アドリブ」です。アドリブは,漫才ファンが漫才をみるうえでの「一番の楽しみ」と言っても過言ではありません。漫才にとってそれほど大切なアドリブが,M-1という漫才最高峰の大会から失われているというのは,いいことではありません

賞レース以外のライブなどで漫才をする場合,大抵アドリブを入れます。お客さんの多くも,「練習通りのガチガチの漫才がみたい」と思っているわけではなく,「アドリブを入れつつ楽しそうに漫才をしている姿がみたい」と思っています。同じネタであっても,演じるたびに「毎回どこか違う」というのが漫才の醍醐味だからです

競技化されたM-1において,「練習通りのガチガチで"完璧"な漫才」をするコンビが増えた結果,アドリブという「漫才ファンの楽しみ」が失われ,アドリブ満載で漫才をするという「漫才師の楽しみ」も失われてしまったのです

「練習通りの"完璧"な漫才をしなければいけない」という思い込み

しかし,「失われてしまった」とは言っても,M-1サイドが「練習通りのガチガチで"完璧"な漫才」をするよう求めたことは一度もなく,演者側が勝手にガチガチの漫才をしているにすぎません。普段のライブのように,アドリブ満載で楽しく漫才をするという選択肢もありますし,そのような漫才をしたほうがもっと上に行けるコンビも結構いると思います

ですから,M-1などの賞レースでは「練習通りのガチガチで"完璧"な漫才をしなければいけない」というのは,完全な思い込みだと思います。「賞レースではちゃんとした漫才を披露しないといけない」という気持ちはよく分かりますが,「アドリブを入れ,心から楽しそうに演じる漫才」,これこそが,本当の意味での「ちゃんとした漫才」ではないでしょうか

予選1回戦のネタ時間の短さ

超ゆるい基準の大会であるにもかかわらずM-1が"競技漫才"になってしまったのは,このような演者側の思い込みと共に,予選1回戦のネタ時間の短さにも原因があると思います

1回戦の持ち時間は2分ですが,2分でアドリブを入れるのは相当きついです。というより,2分という短さでそれなりの完成度のネタを披露するためには,それこそ「練習通りのガチガチで"完璧"な漫才」をするしかありません。こうした状況ゆえに,「M-1というのは『練習通りのガチガチで"完璧"な漫才』を披露する大会」という間違った印象が広まってしまったのではないかと思います

M-1での理想的な戦い方

これらの要素を踏まえて考えてみると,1回戦の2分は割り切って「ガチガチの"完璧"な漫才」で突破し,2回戦・3回戦の3分では少しアドリブを入れはじめ,その後の4分ではガンガンアドリブを入れていつものように楽しく漫才をする,これが,M-1での理想的な戦い方だと思います

ガンガンアドリブを入れつつちゃんと時間内に収めるにはかなりの技術が求められますが,そういう技術を競い合ってこそ,「漫才最高峰の大会」と言えるのではないでしょうか

今はまだ「練習通りのガチガチで"完璧"な漫才をしなければいけない」と思っているコンビが多いですから,アドリブ満載で超楽しそうに漫才をするコンビは「新しい」と思ってもらえるので,今がチャンスです。このやり方で,今なら結構上まで行けるかもしれません

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