ドキュメントZガンダム

Zガンダムはどのように生まれ、受け止められたかを、資料の中から読み解く。

■Zガンダムの位置

 '04年に出版された『大人のガンダム』(日経BPムック)に掲載されたアンケート(※1)によると、『機動戦士Zガンダム』の人気は、『機動戦士ガンダム』に次ぐ第2位。その人気の年齢構成を見ると、25歳~34歳で約6割を締めており、現在30歳前後にとっては『Zガンダム』こそ「ガンダム」であることがよくわかる結果となっている。また記事中では、30歳以下になると『ガンダム』と『Zガンダム』の人気の差はさほどないことも指摘されている。これが'05年現在の『Zガンダム』の立っている位置である。

 だが『Zガンダム』は、放送直後からこの位置に立てた、というわけではない。続編という“宿命”を背負い、さまざまな毀誉褒貶にもまれつつも、20年を生き延びることができたからこその、位置であるといえる。

 この稿では雑誌などに発表された記事を参考にしつつ『Zガンダム』の企画スタートから、その評価の変遷までを俯瞰する。その道のりは「New Translation」へと至る長い助走でもある。

■スタートは'84年2月

 「富野メモ」。富野監督が作品制作のために書き記したストーリーや演出プランを書き留めたものの総称である。『Zガンダム』の富野メモは『Zガンダム』のLD-BOXライナーにその一部が解説付きで公開されている。

 その内容に従って紹介すると、富野監督がガンダム続編の構想をスタートさせたのは'84年2月。2月20日付けの最初期のメモは「不足しているのは何か?/本当にやりたい事は何か?」というテーマ設定を自ら問いかけるとおぼしき記述から始まり、「5年後のスタッフの発見」といったスタッフワークに関するメモもある。

 2月から5月までは試行錯誤の時期にあたる。U.C.0111(トリプルワン)という未来を舞台にした「ゼーター・ガンダム」案、U.C.0045という過去を舞台にした「モビルスーツ アルファ・ガンダム」案が書かれている。「ゼーター・ガンダム」案には、他人との精神的な同一状態を得る「ギャザー・スタイム」という、ニュータイプを超えるアイデアが書かれており、「ゼーター・ガンダムはギャザー・スタイムという機能を具有するのではないだろうか?」と書かれていた。

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