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現代日本文化で最強なのはMANZAIではないか?

10年前の日食の写真でいう内容か、ということですが、日本文化について考えております。

先日、自分が体験した散歩から考えたのが前回。現代日本では、「日本文化」と考えてきたものから離れた暮らしになっている中で、「日本文化」をどう考えるかが必要じゃないの、というような話にしてみた。

では、今の現代日本における日本独特の文化ってなんだろうということなんですが、それは、MANZAIなんじゃないかと思います。

今揺れている吉本興業が日本に広めたコントともトークとも演劇とも異なり、その全てを包括する舞台芸術が、主に二人の演者が並んで立ってマイク1本挟んで話をするという形式の話芸である「漫才」の進化系「MANZAI」。

よく比較される落語は、江戸中期に始まり、明治に完成して、今につながる中で、古典と新作といった作品を生んで継承される一人話芸だと言えます。これはこれで日本独自の「日本文化」だと思いますが、現代日本とは言えない。新作の中には、現代日本の生活から生まれるものもありますが、「日本文化」とされている前提が、着物で座布団で扇子で手ぬぐいで演じるということだとすると、これは現代日本文化ではなく歌舞伎同様の日本という実態を離れた「日本文化」になってしまっている。

そこに行くと、MANZAIは、萬歳から漫才になり、今やMANZAIへと進化しているわけです。鼓を持って言葉遊びで寿ぐ芸であった萬歳から、エンタツ・アチャコがスーツを着て二人の掛け合いで繰り広げる話芸としての「しゃべくり漫才」に変化させました。その後見として秋田實と林正之助という大阪演芸界の大立者がいて、この漫才という仕組みを寄席で発展させて吉本興業が大きくなっていくということになるわけです。

戦後の焼け野原で寄席がなくなったところで、吉本興業の専属芸人は花菱アチャコだけになるわけですから、その結びつきは深いと考えられます。

そこから多くの芸人が出ましたが、漫才は関西(上方)と関東(東京)ではやや異なる発展を遂げます。大阪の笑い重視に対して、東京はやや風刺が強くなっていくように思います。上方ではダイマル・ラケット、いとし・こいし、鳳啓助・京唄子、東京ではトップ・ライト、てんや・わんや、Wけんじなどが寄席からテレビへと進出していきます。

しかし70年代に入ると東京ではコント55号の大人気もあってコントが強くなっていきます。上方では落語が四天王を中心に再興し、新喜劇がもてはやされます。やや漫才の低迷期と言えます。

80年代に入って漫才ブームが起きます。そこで使われたのが「THE MANZAI」という言葉です。

そこで人気が出たのがツービートであり、B&Bであり、紳助・竜介、やすきよ、巨人阪神でした。彼らを中心に組まれた番組が「笑ってる場合ですよ」や「オレたちひょうきん族」でした。今のお笑いの原点であり、支配者の登場です。

THE MANZAI とその後のお笑い番組を通じて吉本興業の東京進出と全国制覇が進んでいきます。その後、「笑ってる場合ですよ」のコーナーだった「お笑い君こそスターだ」と日本テレビの「お笑いスター誕生」という素人参加番組から生まれた師匠のいない芸人の誕生が、大きく芸人のシステムを変えます。さらに吉本興業は芸人育成システムとしてNSCを開校し、その第1期生がダウンタウンやハイヒール等の現在の吉本興業を支える芸人だったことはよく知られています。

漫才をMANZAIに本当に変えたのはダウンタウンだと考えます。

そして、吉本興業の本格的な東京進出は、このダウンタウンの東京売り出し以降になり、それを進めたのが現在の大崎会長だということもよく知られるところです。

ダウンタウンは、当初、横山やすしに「チンピラの立ち話」と言われたのは有名で、それを根に持った松本が「ごっつ」で「やすしくん」をやった等の話は今回関係ないので割愛しますが、その「チンピラの立ち話」がその後、漫才の主流になっていき、さらに「M-1」というシステムの中で4分間でどれだけ笑いが取れるかという手数の多さというのを競うような方向に漫才が進化していくのも、島田紳助とダウンタウンが仕掛けた流れの一つです。この短時間で多くの笑いを詰め込む手法の進化というのが、現在のMANZAIの主流であり、そのあり方が極めて現代日本的だと思うのです。

今、MANZAIはいっときほどの熱を持っておらず、ネタ番組が少なくなり、手数だけのネタでは大きくブレークしない、どちらかといえばキャラクターの立て方を芸風に組み合わせることで、ひな壇やバラエティで成功する芸人の方がもてはやされるように思えます(それでもコンテストでは手数の多さにどういうシステムを持ち込むかが重要ですが)。それでも昔に比べて多くなった吉本の劇場を中心に披露されている漫才は、多くの場合MANZAIの影響を受けたスタイルになっています。

日本独自の話芸として、アメリカのショービジネスのスタンダップコメディアンやダブルアクトとは異なる「MANZAI」こそが、現代日本の社会状況(非正規労働の疲弊とかパワハラとか)を反映した社会の縮図になっていることは、昨今の吉本興業一連の会見で明らかになってしまいました。

だからこそ、松本人志がどうするかが問われ、大平サブローやオール巨人や島田紳助というTHE MANZAI 世代の人たちが大御所感もってコメントするわけです。現代日本を象徴する文化的な出来事だと言えましょう。

「日本文化」としては歌舞伎も落語も文楽も講談もあるのですが、現代日本文化としては、MANZAIが最強だなというのが、今のところの見解です。





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