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コンピュータサイエンス・人工知能

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【コンピュータサイエンス・人工知能】コンピュータと人工知能に関する専門的な内容を分かりやすく解説したエントリー集
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#計算機科学

10分で分かるゲーデルの不完全性定理 ~ いまさら聞けないコンピュータサイエンス【連載第1話】

「我々は知らねばならず、そして知るであろう」 ドイツが生んだ大数学者であり、「現代数学の父」と呼ばれた天才ダフィット・ヒルベルトは、このスローガンをかかげて世界の数学者を激励しました。 ドイツが第一次世界大戦とベルサイユ条約による打撃から回復し、ヨーロッパにナチスの足音が聞こえ始めた1930年(昭和5年)に、すでに晩年にあったヒルベルトによるこのスローガンから、コンピュータサイエンスの壮大なドラマが始まります。 1.数学者に禅問答を課した「ヒルベルト・プログラム」時は遡

15分で分かる人工知能と計算機科学の歴史<前編>

1.はじめに私が機械学習の研究を始めたのは2002年でした。各家庭にブロードバンドが普及し始めたインターネットの黎明期です。そのブルーオーシャンを一気に手中に収めようと、ソフトバンクが街中でADSLモデムをバラまいていました。 当然、計算機科学の花形は、インターネットやその基盤を支えるデータベースに関する研究です。当時は、機械学習など誰にも振り向いてもらえない不毛の研究分野でした。すごい勢いでモデムをバラまくソフトバンク社長の頭より不毛だったのは、よくできた皮肉だと思います

15分で分かる人工知能と計算機科学の歴史<後編>

前回は、人工知能の黎明期から、第二次人工知能ブームが収束して「冬の時代」に入ったところまで説明しました(1950~1980年代)。 前編はこちら。 今回は、機械学習が社会で頭角を現し、ディープラーニングの登場で第三次人工知能ブームが盛り上がるところ(1990~現代)まで説明します。そして、今回のブームの要因と各ブームにおける共通点などを掘り下げます。 1.空前のコンピュータ環境の出現と機械学習の発展エキスパート・システムと第5世代コンピュータの挫折から、システムの動作を