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書籍出版の舞台裏 ~「成果を生み出すテクニカルライティング」はこうして生み出された

皆さまのおかげで、ようやく拙著の出版にこぎつけました!そして、Amazon の新着ランキングで、なんと最高4位を獲得しました!すごい!自画自賛!

だって、Amazon の「ビジネス実用」のカテゴリは、苫米地英人、ひろゆき、佐藤優、橘玲、田村耕太郎など、歴戦の著名な猛者が集う最激戦のカテゴリですよ。そこへ、

(1)なんの出版実績も知名度もない私が、
(2)エンジニア・研究者に読者層を絞り、
(3)税込 2,462 円という強気の価格設定をしてるのに、

新着ランキングで(瞬間風速的にではあっても)第4位!もう大興奮!

これを見た瞬間、朝から酒を飲みながらパチンコ屋の開店を待つパチンカスが大当たりを引いたとき以上に、私の脳内ではアドレナリンが出まくっていたと思います。

これもひとえに、皆さまのご支援あっての成果でございます。お買い求めくださった多方面の方には、もう足を向けて寝られません(一体どこを向いて寝るんだという話になりますが……)。

本当にありがとうございます。若手のエンジニア・研究者に向けて書いた本ですが、若手を指導する立場にある方にもぜひご一読いただき、指導のポイントについてヒントを得ていただければ幸いでございます。どうぞよろしくお願い致します。

というわけで、出版を(自分で勝手に)記念して「書籍を出版するとはどういうことか?」をQ&A方式で解説したいと思います。拙著出版の舞台裏ですね。書籍を出版したい!と考えている方の参考になればいいなと思っております。

Q1:どうやって出版に至ったのですか?

A1:技術評論社に書籍企画を持ちこみました。

2017 年 12 月上旬に企画持ち込みの窓口に企画書を送ると、すぐに「年内に打ち合わせしたい」と編集者から返事がありました。出版実績のない私の企画に飛びついてくるとは……私の企画がよほど優れていたか、技術評論社が書籍企画によほど飢えていたか、どちらかかなと思いました。

ちなみに、このとき私が送った企画書には、タイトル案、キャッチ(サブタイトル)案、読者対象、企画意図、企画概要、構成案、類書、執筆状況、完成予定時期、アピールポイント、著者略歴、連絡先の 12 項目が含まれていました。

振り返って思えば、Amazon のジャンル(カテゴリ)と、書店がこの本を並べるであろう書棚とを盛り込んでおけばよかったなと思いました。実際、拙著を Amazon に出した後に、カテゴリを変更した経緯があるので(「人文・思想」>「言語学」から「ビジネス・経済」>「ビジネス実用」に変更)。

Q2:なぜ技術評論社に持ちこんだのですか?

A2:私が調べた限り、企画持ち込みの窓口を開けているのが技術評論社だけだったからです。

思い付く限り出版社を洗い出し、すべてウェブサイトを熟読しましたが、技術評論社だけでした。郵送すれば検討してくれるところはあったと思いますが、どの出版社もそれを示唆する記載すらありませんでした。それなら、窓口を開けて待ち構えているところに放り込む方が話が早い。

初回打ち合わせのときに、編集者から「なぜウチに持ちこんだんですか?」と聞かれて正直に答えたところ、大層ガッカリした表情だったことをいまだに覚えてます。誠に申し訳ございません。自慢にならないですが、「その場の状況に応じて気のきいた答えを返す」というのは、私が最も不得意とすることの1つです。

なので、技術系の書籍の企画を持ちこみたい!という方は、まず技術評論社の門を叩きましょう。(必ず企画が通ると私が保証しているわけではありませんので、あしからず……)

Q3:どれくらいの分量を書きましたか?

A3:10 万字書いて1万字削り、さらに2万字書き足して 0.5 万字削った感じです。

合計して 12 万字くらい書いたと思います。A5 版の通常フォントで 192 ページだと、それくらいの分量になるそうです。

最終的な分量は 10.2 万字くらいですが、これがそのまま出版されるわけではありません。特に、私なんて「はじめてのしゅっぱん」ですので、いったん全部書き上げた後、編集者とやりとりしながら、徐々にクオリティを上げていくイメージでした。

Q4:どれくらいの期間で書きましたか?

A4:実質3ヶ月くらいです。

まず、年末年始(2017 年末~2018 年始)にかけて、私が書籍に盛り込みたい内容をぶわーっと洗い出しました。それを編集者が拾い上げて、初回打ち合わせで検討した構成案をさらに精緻化しました(2018 年1月下旬)。ここで書籍の骨子がだいたい決まります。

ここからぼちぼちと書き始め、出版社での会議で正式に企画がとおり、2018 年3月中旬には本当に執筆を開始できる!という状態になりました。2回目の打ち合わせ(3 月下旬)のときに、編集者から「完成時期はいつくらいを目標にしてますか?」と聞かれたので「9月末で」と答えたところ、「それはいいペースですね!」とグッジョブ反応でした。

私としては、約半年間、各月2万字ペースで書き続けることを想定していたのですが、仕事が忙しかったせいもあり(言い訳)、4~7月の4ヶ月で4万字くらいしか書けていませんでした。なので、残りの6万字を8~9月で集中的に書き、体感的には「約3ヶ月」でした。

Q5:書き上げてからの段取りは、どんな感じでしたか?

A5:9月末に初回ドラフト完成、10~11 月に加筆修正、タイトル・サブタイトル・各見出し検討、12 月にゲラチェック、翌1月上旬にカバーデザイン検討、同月下旬に入稿、翌2月上旬に出版契約締結、2月19日に発売でした。

技術評論社に企画を持ちこんでから書店に本が並ぶまで、約1年2ヶ月でした。長いですね。特に、初回ドラフトから発売まで半年もかかるとは予想してませんでした。書籍の編集って大変なんだな……と遠い目をしながら編集者とやり取りしてました。

え?編集者は誰かって?……それはここでは言えませんよ。だって、もし売れなかったら編集者として汚名が残るじゃないですか!(どうしても知りたい人は、拙著奥付を見てください)

Q6:印税はどれくらいですか?

A6:それも言えません……

どうしても知りたい!という人は、「書籍 印税率」あたりでググッてみましょう。いろいろと書いてありますが、だいたいこのとおりですね。

ちなみに、技術評論社には申し訳ないですが、私個人としては、もちろん儲けるために書いたわけではないです。また「名刺代わり」の営業ツールにするつもりで書いたわけでもありません。

「本を出してみたかったから」という目的と手段をはき違えたピュアな動機が先にあり、次に(拙著の「はじめに」に書いたとおり)、私のささやかな経験・ノウハウを共有することで、エンジニア・研究者がもっと成果を上げられるようになったらいいなと考えたからです。

何が言いたいかというと、同じ時間を費やすなら五反田東口の大阪王将で謎のアラブ人と一緒にバイトする方が儲かると思うので、印税収入だけをあてにすると報われないということです。

Q7:献本しましたか?

A7:もちろんしました。おかげでものすごく貴重な体験ができました。

当然「送ったら販促が期待できる人」をリストアップして献本します。献本先は私が決めていいとのことだったので、販促を考慮しつつも、個人的なファンにお送りさせて頂きました。結論としては、「本当にデキる人は、やはり謙虚でアクションが早い」ことを再確認した次第です。

まず、大学院時代の先輩である大羽さん(京都大学のスーパーデータサイエンティスト)に献本しました。Twitter で「当然オレには送るんだよな?」的なリプライを受けたからです。

なので、ネタ的なメッセージを付けてお送りしたところ、しっかりとネタ的な宣伝をしてくださいました。「図版がきれいで好印象」というまったく書籍の内容に言及していない攻め方が素敵です。

次に、グーグルの尾崎さん(六本木の TJO さん)には、編集者から発送する形で献本させて頂きました。尾崎さんは技術評論社で出版履歴がある(手を動かしながら学ぶ ~ ビジネスに活かすデータマイニング)ため、見ず知らずの私から送るよりも販促に協力してくださるだろうと考えたからです。その結果……

すごい!感激!さすが!の一言に尽きます。ありがとうございます!このおかげで拙著の Amazon ランキングが押し上げられたのだろうと思います。六本木をメッカだと思い、床に額をこすりつけて深く礼拝するしかない。

そして、やはりすごい人だなと思ったのが、出口治明さん。ライフネット生命の創業者で、現在は立命館アジア太平洋大学(APU)の学長をされている方ですね。前々からファンでした。最近は「日本人は『メシ・フロ・ネル』の発想から脱却せよ」という講演のまとめを読んで感動しました。

献本を郵送した次の日の午後、私は区役所でつまらない手続きをしていました。そこへ電話が鳴り、画面を見ると「日本、大分県」と出ている。まさか……!!

電話に出ると「あ、出口ですけど、藤田さんですか?」。なんとご本人から直電が。ポストに投函した時間から逆算すると、封を切ってすぐに電話をかけてきてくださったことは間違いない。まずここで一発アタマを殴られたくらいに驚嘆しました。

だって、出口さんレベルの人なら、献本なんて山ほど受けてるはずです。学長として日本全国を講演で飛び回っているでしょうから、とてもご多忙に違いない。それなのに、どこのウマのホネか分からん奴から本を送りつけられて、その場ですぐにお礼の電話をかける……できますか?普通。

そして、電話でお礼を述べた後、次におっしゃったことは「勉強させていただきます、学生にも勧めておきます」。ここでもう一発アタマを殴られた気分でした。ウマのホネに向かって言えますか?そんなこと。それを聞いたとき、スマホを頬にこすりつけて、ひたすら「ありがとうございます!」としか言えませんでした。たぶん、傍から見ると挙動のおかしい変な人だったと思います。

最後に、出口さんは「ぜひAPUにもお越しください」とおっしゃいました。ここでさらに一発アタマを殴られたかと思いました。これは、私の献本に便乗し、APU学長として大学を売り込む取り引きだと思ったからです。すごい……出口さんクラスの大成したビジネスマンは、息を吐くように自然とこういうことができるのか……!!

わずか2分ほどの電話でしたが、その間に3発くらいアタマを殴られた気分でした。「この高みにまで上りたい」と感じて、ますますファンになった次第です。ありがとうございました!

……と、まあ、そんなわけで、「本を出版する」ことをとおして、いろいろと貴重な経験をさせていただきました。出版の機会を与えてくださった技術評論社、拙著をお買い上げくださった読者の皆さま、拙著をご紹介してくださった大羽さん、尾崎さん、出口さん、本当にありがとうございました。

今後とも、藤田と拙著をどうぞよろしくお願い致します。

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