「なんでウチの会社は PDCA がまわらないの?」と思ったときに読む話

今回は「PDCA がまわらないのはなぜか?」という話をします。というのも、ある友人が「ウチの会社は全然反省しない」などと珍しいグチのこぼしかたをしていたからです。

おもしろいと思ったので「なぜ反省(学習)できないのか?」をしばらくまじめに考えたところ、経営者が「自分は会社のことを知り尽くしている」と勘違いしているからではないか?という仮説にたどり着いたので、それを順番に説明しようと思います。

「知ったかぶり」をする脳のバグ

最近「知ってるつもり~無知の科学」という本を読んだんですよ。いま売れてるやつです。私もこういうポピュラーサイエンスを書きたいと感心しました。

この本は、認知科学の研究成果に基づいて、いかに人間が「知ってるようで実は全然知らないか」を説明しています。そして、次のような具体例をあげながら、これは「進化の過程で人間が獲得した脳の仕様である」と述べています。

トイレ、皆さん毎日当たり前のように使ってますよね。ところで、「トイレが汚物を流すしくみ」を詳しく説明できる人が、どれくらいいるでしょうか?

たぶん、ほとんどの人が「ほら!レバーをグッと押したら、ジャーッ!ってウンコがグッバイするんだろ!?」くらいのレベルでしか説明できないと思うんですよね。

はい!私もそうでした~!!(過去形になっているのは、この本を読んで詳細を理解したから。気になる人は要チェック!

なぜ「トイレが汚物を流すしくみ」を理解してなくても、またその必要がなくてもいいのか?

もちろん「誰かが知ってるから」です。
誰かが知ってるなら、自分は知らなくていい。
問題が起これば、知ってる人になんとかしてもらえばいい。

小難しく言いかえると、知識は個体の頭脳にあるのではなく、集団的頭脳にあるんですね。

世界の複雑さに対して個体がもてる知識は絶望的に小さい。それでも、厳しい世界をどうにかサバイブしなければならなかった。

だからこそ、人間は組織・社会を作って知識を分散させ、目的に応じてそれらをうまく組み合わせて、ようやくいままで生き延びてきた……この本はそう説明しています。

ところで、多くの人が「ウンコをグッバイできる仕組み」を説明できないことに、いまあらためて気づいたはずです。

では、なぜ「知らない」ことを意識できないのに、何のわだかまりもなく毎日グッバイできていたのか?

それは、他人の知識まで「自分の知識」と誤解しているからです。

ここでまさかのジャイアニズム登場ですが、どうやら「自分が知っていること」と「組織・社会に任せていること」との境界をあいまいにできるからこそ、スムーズに組織で分業できるという逆説的な事実があることが、認知科学の研究で明らかになっているそうです。

要するに、厳しい世界をサバイブするために、進化の過程で人間が獲得した脳の仕様だそうです。ある意味バグと言っていいでしょう。

「知ってるつもり」に書かれている内容を乱暴に要約すると、こんな感じです。ものすごく説得力があります(この本は絶賛おすすめ!)

経営者は会社のことを知り尽くせない

さて、この本の内容を踏まえて私が最初に考えたことは、「ウンコをグッバイできる仕組み」すら知らないレベルでしか知識をもてないのに、会社のことを全部知り尽くすことなどできるだろうか?ということでした。

……できるわけないですね。というか、個人で知り尽くせる程度の事業なんて、それこそウンコです。とっととグッバイした方がええやん、という残念な話になってしまいます。

事業とそれを支える組織が大きくなり、分業が進むと、そのすべてを1人の経営者が知り尽くすことは不可能ですし、その必要もない。トイレの仕組みと同じです。

しかし、よほど意識的でなければするっと勘違いしてしまうほど、脳のバグは強力です。

特に、オーナートップとして君臨する経営者にとって、自分の会社はわが子にひとしい。そのため、このバグはえげつないレベルで強烈に作用します。

つまり、自分の手で育てあげた子どものことは熟知している。自分の会社でおこなわれている業務は、詳細にいたるまですべて知り抜いており、またそうでなければならない……と。

さて、経営者がバグってこのように勘違いしたままだと、どうなるか?

自分は会社のことを知り尽くしている → そして死ぬ気でがんばっている → それなのに事業がうまく伸びない → 誰かが邪魔をしてやがる!→ 犯人は誰だ!!お前か!?それともお前か!?

これ、本人は意識できてないと思うんです。むしろ、被害者であると感じてます。だから、無自覚に責任転嫁してしまうわけです。おそろしい。

発想の転換を阻害するバグ

このバグった状態が放置されるとどうなるか?

「自分で PDCA をまわす」から「自分よりよく知っている誰かに PDCA をまわさせる」という発想の転換ができなくなるだろうと思います。

経営トップは、ひとりで全部を知り尽くせるほど小さかった組織・事業を大きくするために、自ら猛烈に PDCA をまわしてきたはず。

ところが、ある一定の規模を超えると分業せざるをえません。そのため、事業をより大きくするためには、現場に「PDCA をまわさせる」ことが必要になります。これができないと伸び悩む。

簡単に言えば、現場に全部任せなければならない。そこにいちいち口出ししてると、現場の稼働率が落ちる → 経営効率が落ちる → 業績の低迷。現場は「経営してくれよ!」と泣くでしょう。

では、現場に「PDCA をまわさせる」ためにはどうすればいいか?

経営者が無意識に抱えている「全知全能のオレ」というプライドを捨て、どれほど不都合な真実を知らされても受けとめる度量をもつ!……これが必要なのかなと。

「チームがパフォーマンスをだすためには何が必要か?」を徹底的に調べた Google がいきついた答えは、「メンバーが安心感を得られること」だったそうです。

「自分はここにいていい」「何か言って恥をかいたって大丈夫」「周りが自分を認めてくれる」……ああ、これはがんばりますわ。さすが Google。

これはウルトラ難易度が高いですよ。事業の成否は経営トップの器次第ってことですから。逆に、事業不振の原因についてミもフタもない言い方をすれば、組織・事業の規模に経営者の人徳が追いついていないからってことになる。

大企業のすごいところは「トップの人徳」のような個人的能力に依存するフェーズを乗り越えて、儲かる仕組みを作り上げているところですよね。

……まあ、単に個人的能力の影響が薄まるほど組織が大きかったり、サラリーマン社長の能力が低かったりすることが原因なのかもしれませんが。

結局最後は経営者の度量次第

というわけで、「知ってるつもり」の内容を踏まえると、「PDCA がまわらない」の原因に対する仮説として、私は「経営者が『自分は会社のことを知り尽くしている』と勘違いしているから」を支持したいと思います。

そして、この原因に対するソリューションは「バグを除去する」以外になく、これを可能にするのが「自分は何も知らない」という経営者の謙虚さと、不都合な真実を受けとめる度量なのかなと考える次第です。

えーと……話題が話題だけに全体的に暗い&説教臭くなったので、また最後におもしろ動画を置いときます。この少年のように、ひたむきにがんばれるようになりたい。おわり!


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藤田 肇

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