「成果を生み出すテクニカルライティング」の企画から構成案の完成まで

拙著発売から約 20 日が経ち、技術評論社から2月分の集計結果を正座して待っております。お買い上げくださった皆さまはいかがでしょうか。思考の言語化でそれを整理して成果をあげていることを、切に期待しております。

黙って正座して集計を待っていればいいものを、私は転居先が片付いて相当ヒマを持て余していたので、うっかり mixi にログインしてしまうという失態をやらかしました。たぶん、10 年ぶりくらいだったと思います。

その結果、想像を絶するパンドラの箱を開けてしまった衝撃に耐えきれず、光の速さでアカウントもろともデリートした次第です。どう見ても黒歴史です。本当にありがとうございました。

ちなみに、某友人のアカウントが妙な業者に乗っ取られており、フィッシングのメッセージが大量にばらまかれていたようですが、廃墟化したピエリ守山で爆竹を鳴らしても誰も迷惑しないので大丈夫です。

さて、今回は「拙著の企画をどうやって進めたか?」について説明したいと思います。

4年以上前から温めていた構想

実は、私は4年以上前から拙著の構想を温めていました。実際、拙著の内容とほとんど同じ内容を、2014 年 10 月に SlideShare にアップしています。アップしてから4年以上経っているのに、のべ 1,000 View にも達していない泡沫感には軽くヘコまざるを得ないのですが……。

優れたテクニカル資料は、優れた技術(テクニック)の母です。「テクニカル資料を書く」というプロセスは、いわゆる「PDCA サイクル」における「C(点検・評価・振り返り)」に相当するものですから、「いまの方向性で開発の最終目的は達成されるか」を開発の過程で随時チェックでき、長期的な視点に立って軌道修正を図るきっかけを得ることができるためです。このスライドでは、ポイントを明確にしたテクニカル資料を書いて優れた技術を開発するためのハウツーを解説します。

とはいえ、当時から「本にするとおもしろいだろうな」と確信しており、実際に出版企画書を書いたり、持ち込みできる出版社を見回したりしていたのですが、なぜかモジモジしたままほったらかしていました。要するに、自分のなかでプライオリティが低かったわけですね。

このままでは「やらずに後悔する」ことになってしまう…!
そう考えて、おそるおそる技術評論社に企画書を送ったところ、予想外に食いつきがよくて驚いたことは前回書いたとおりです。世の中、何が起こるか分かりません。「とりあえずやってみる」ことは重要です。

実際の出版企画書はどうだったか

前回の記事に、企画書に盛り込むべき項目を列挙しましたが、拙著の出版企画書は次のような感じでした。

当初のタイトル案は、「研究・開発がうまくいく!技術者のためのテクニカルライティング」になってますね。

かろうじて企画意図に拙著のエッセンスが盛り込まれていますが、これを既読スルーすることなく拾い上げた技術評論社に慧眼があったのか、よほど企画に飢えていたのか、そのあたりの事情は未だに分かりません。

それにしても、「この本はエンジニア・研究者でなくても参考になる」という声を聞くたびに、読者層を限定することなくもっと汎用的な実用書にすればよかった……と少し後悔してます。このあたりは、理系バカでマーケティング力のない自分の非才を嘆くばかりです。

次回作は「クリエイティブ・ライティング」をコンセプトにして、「言語化を徹底すれば仕事力が上がる!」ことを啓蒙する実用書を書きたいと思いますので、出版社の皆さま、どうぞよろしくお願い致します。

……いまググッて気づいたのですが、「クリエイティブ・ライティング」は宣伝会議の登録商標でした。私が言うところの「ライティング」は、キャッチコピーのように対外的なマーケティング効果を生むものではなく、「自分の思考整理」を目的とする内向きなものですのでちょっと違いますね……再考します。

タイトルや各章の見出しは原稿を書き終わってから再検討する

おそらく、ほとんどの書籍では、原稿が完成してからタイトルや見出しを決めるのだろうと思います。

私の場合、原稿がすべて完成した後に、ようやく編集者から「タイトル案などをブレストしておいてください」と言われ、夜な夜な自宅のホワイトボードに案を殴り書きしてました。

2枚目の写真のとおり、最終的に、
(1)トップエンジニア・研究者が実践(煽り系の殺し文句として必要)
(2)言語化
(3)思考整理(言語化との関係を明らかにすべき)
(4)研究開発
(5)テクニカルライティング(本の性質から絶対必要)
あたりがタイトル・サブタイトルに入りそうだという結論になりました。

ちなみに、全然関係ないですが、L字脚の大型ホワイトボードを自宅に置くのは、本当にオススメです。脚がL字であれば、壁にぴったりと付ける形で設置でき、空いた壁さえあればコンパクトに設置できます(その代わり、裏面には書けません)。

提案した構成案は全部却下された

一応、企画書には構成案(目次)を書いているのですが、編集者と打ち合わせて完成した構成案は、これとはまったく違ったものになりました。

つまり、少なくとも今回の企画では、構成案はその採否にほとんど影響していないということです。言い換えれば、結局「最終的に著者が言いたいことは何か?」というコンセプトが明確で、それが読者に刺さる(=読者の課題を解決できる)ものであればよいということだと思います。

そう気づいて自分が書いた企画書を振り返ると……確かに「『優れた技術資料』を書くことにより、誰もが『優れた技術』を開発できる『優れた技術者』になれる」と書いてはいます……が、コンセプトとして弱すぎますね。やっぱり「技術評論社はよほど企画に飢えていた」説が有力だと思います。

では、どのように構成案を作るのか?
前回の記事にも少し書きましたが、私が書籍に書きたい内容を洗い出し、それを編集者が拾い上げる形で作りました。

大晦日から年始にかけて、東五反田の喫茶店でタバコを吸いながら、現時点で書けることをひたすら書き出すという作業をやりました。構成案を検討する材料でしかないので、日本語として破綻していてもお構いなしです。

私が書き殴った「書籍に盛り込みたい内容」からキーワードを拾い上げる形で、編集者が構成案を作ってくれました。すごい!

これから出版社に企画を持ちこもうとする人は、まずこの「書き殴りによる洗い出し」をやった後に、自分で構成案を作る方がいいかもしれません。その方が、企画が通りやすいと思うので(たぶん)。

初稿の一割はボツになる

構成案に沿って内容を書き込んでいくわけですが、私の場合、書いた内容の一割がボツになりました。1章の一般論を削って、後半の具体例を書き足したイメージです。やはり具体例を厚く出す方が理解してもらいやすいでしょうということで。

例えば、次の文章は、拙著 33 ページに入れるつもりで下書きしたものの、最終的に削除したものです。

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「解決策を考える能力」とは、「結果から得られる情報量が最大になるアプローチを嗅ぎ当てる能力」と言い換えることができます。仮説の検証に使った対象を観察し、そこに「自分が気づかなかった何か」を発見し、小刻みの軌道修正を繰り返して仮説を立て直す能力とも言えるでしょう。

「マスターマインド」というゲームがあります。断片的なヒントから隠されたピンの色・配列を推理する古典的なゲームです。プレイヤーは、出題者と解答者に分かれ、次のルールにしたがってプレイします。

(1)出題者はピンを4本選び、解答者に見えない位置に並べる(例えば、赤・緑・紫・青)。
(2)解答者はピンの色・配置を推理し、それを出題者に伝える(赤・青・黄色・水色)。
(3)出題者は解答者の推理に対して、次の要領で回答する。
 (a)位置も色も正しいピンの数を「ヒット」として伝える。
 (b)色は正しいが位置が異なるピンの数を「ブロー」として伝える。
上の例の場合、出題者は「1ヒット(赤の色・配置が共に一致)、1ブロー(青の色のみが一致)」と回答する。
(4)2~3を繰り返し、4ヒット(色・配置をすべて当てる)に至る回数が少ないほど良い成績とする。

最初の推理は当てずっぽうにしかならないのですが、この当てずっぽうから得られる最良のヒントは何でしょうか?

答えは、「0ヒット、0ブロー」です。つまり、仮説に対する検証の結果が「完全な想定外」であることが最良です。

なぜなら、想定の範囲(この場合は当てずっぽうの推理がカバーする可能性の範囲)に解が存在しないという事実は、真の解決が存在する範囲を半分以下に絞れるほど情報量が多いからです。

「解決策を考える能力」は、この絞り込みを意図的に引き起こす能力とも言えます。アプローチを複数考案し、それらがラフな段階から簡単な方法で仮説を検証しますが、意外な発見に繋がるかもしれないアプローチを「壁打ち」することで、早めに筋の悪いアプローチを候補から外し、早い段階でざっくりとした方向性を決めることができます。
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確かに、本論から外れる内容なのでこれはボツですね。ボツ原稿がブログで復活するとは思いもよらず、ちょっと嬉しいです。

おわりに

さて、すでに3月も中旬に入っているので、いよいよ拙著の初速が出版社から報告されてくるはずです。私が観測する範囲ではおおむね好評のようで、Amazon では神が降臨して星5つのレビューを授けてくださいました。ありがとうございます!

皆さまも、黄金フォーマットを実際に使う場面に応じて最良の形に整え、思考整理にお役立てください。

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藤田 肇

成果を生み出すテクニカルライティング

「正しいテクニカルライティングの作法を身につけて思考を整理し、それを正確に言語化できるようになれば、研究開発で継続的に成果を上げられる」——拙著に関する追加情報を更新します。
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