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生成AI実践の意外な効果?流行らせたくてもできなかった市民開発ブーム


こんにちは、富士通で生成AI推進を担当している淺間です。
富士通では2023年5月から、全従業員12万4,000人向けに生成AIのサービス(GPT4など)を展開しており、その総利用回数は400万回を超えます
作業の効率化やAIリテラシー向上をはじめ様々な効果が見えつつありますが、当初想像していなかった影響が出てきています。それは市民開発です。
市民開発とは、専門的なプログラミングスキルを持たない従業員などが、簡易なツールやプラットフォームを使用してアプリケーション(以下、アプリ)やソリューションを開発することを言い、そのカルチャーが爆発的に広がってきています。
今回は、社内向けの生成AIサービスの開発を担当するマネージャーの木村匡志にインタビューし、その実態を深掘りしていきます。

富士通での生成AI活用と変化

今、富士通グループ内で生成AIはどれくらい使われていますか?

富士通の場合、LLM(大規模言語モデル)をベースとしたサービスは大きく2種類提供しています。一つはUI画面付きのWebアプリケーション(以下、Webアプリ)で、もう一つはAPI*です。利用者で言うとWebアプリの方がまだ多いですが、利用回数だけで見ると今はどちらも同程度くらい。累計で420万回ほどです (2023年12月時点) 。
すごいスピードでユーザーが増えてきていますが、ポテンシャルからするともっと利用されてもおかしくないんじゃないかなとは思っています。
 
*API:Application Programming Interfaceの略で、あるサービスが持つデータや機能を、ほかのアプリやサービスが利用できるようにするための仕組み。

社内の取り組みを始めてから、どんな変化がありましたか?

特に意外だったのは市民開発の活性化です。「生成AIを組み込んだサービスをつくりました!」という声をよく聞くようになりましたし、Webアプリと同じかそれ以上にAPIの利用が進んでいるのがその証拠です。
 
社内にAPI文化をつくろう、といった取り組みを実は数年前から始めていたんですが、元々専門スキルがある人の目にしか留まらず、また、市民開発を推進する企画では、イチからの学習となると教育コストも無視できないので、普及に苦戦していました。
 
それに比べ、生成AIの流れに乗って非常に多くの従業員が、元々のスキルに関係なくAPIを使った市民開発に取り組んでいるというのは驚きですし、一種のターニングポイントのように思っています。

このようなブームの背景は何だと思いますか?

一つは、社内向けに提供するサービスはどうしても多くの利用者にとって最適でなくてはならないので、人によっては「もう少しこうしてほしい」というニーズが出てしまうことだと思います。ニッチな周辺技術も含め、「こういう使い方を試したい!よし自分でやろう」と考えているユーザーの方が一定数いるということですね。
もう一つは、APIを使ったことがない人でもその使い方やアプリのつくり方をAIそのものに聞いて解決できることが挙げられます。
「プログラミング知識ゼロでもAPIを使ってアプリをつくってみよう!」といった趣旨のイベントやそのアーカイブは社内でも盛り上がりを見せていますね。

2023年の12月に行われた社内イベント。ユーザー部門が自発的に実施してくれた。

社内事例と今後の展望

社内ではどんな使われ方をしているのでしょう?

 例えば、Microsoft ExcelのVBA*で実装してアンケート分析を助けるツールであったり、開発者向けアプリであるVS codeの拡張機能として実装し開発の効率化に挑戦していたり、多くのユースケースが出てきています。

*VBA: Visual Basic for Applicationsの略。Microsoft Officeに含まれるアプリケーションソフトの拡張機能

おもしろかったのは、社内のマネジメント層を集めたワークショップの事前案内で「各自社内版ChatGPTのAPIキーを取得しておいて下さい」というアナウンスがあったことですね。ワーク中にAPI経由で生成AIを用いるそうで、こんなことは以前だったら正直あり得なかったと思います。「APIって何?」というところからだったんじゃないかなと。

今後に向けて、考えていることなどあれば教えて下さい。

生成AIを通じてこうした新しいムーブメントが起きているのは非常に嬉しいです。市民開発をさらに盛り上げるという意味では、ほかのAIやサービスと連携して一緒にAPI提供を加速させたいという気もしますし、逆に市民開発で盛り上がりを見せたものを全社向けサービスに逆輸入する、なんてこともあり得ると思います。
なんにせよ、夢のある話だと思いますので、今後も積極的に取り組んでいきたいですね。 

インタビュイー: 富士通株式会社 Digital Systems Platform Unit 木村匡志


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