昨日ツイッターを見ていたらこんなツイートを見つけた。

仰ることはわからないでもない。ただこのアカウントはアマビエのみならず全てにおいてこの論調なので、まあ拾い食いくらいの感覚でツイートしたのだろうと思われる。別に深い考えのことがあっての発言では一切ないだろう。

ということで、私なりにアマビエの事を少し考えてみたので、お時間ある方はおつきあいをお願いいたします🐟

「アマビエ」
江戸時代後期の肥後国（現・熊本県）に現れたという。
弘化3年4月中旬（1846年5月上旬）のこと、毎夜、海中に光る物体が出没していたため、役人が赴いたところ、それが姿を現した。姿形について言葉では書き留められていないが、挿図が添えられている。
その者は、役人に対して「私は海中に住むアマビエと申す者なり」と名乗り、「当年より6ヶ年の間は諸国で豊作が続くが疫病も流行する。私の姿を描き写した絵を人々に早々に見せよ。」と予言めいたことを告げ、海の中へと帰って行った。（ウィキペディア：アマビエの項より）

妖怪好きの間では比較的メジャーな妖怪で、最近ではアニメの鬼太郎などにもポップなカラーリングとキャラデザインで登場している。

近年において類を見ない勢いで流行中の疫病・コロナの蔓延に関連付け、SNSで誰かがこのアマビエエピソードを紹介した所、またたく間に拡散。
絵心のある人は皆こぞってアマビエを描き、早い会社ではグッズ展開も始まった（商売上手やなあ〜）

で、である。まずぶっちゃけると、アマビエを描けばコロナが収まるなんて本気で思って描いてる人は割と少ないのではないかと私は考えている。
絵を描いて流行り病が何とかなるなら、お医者さんもワクチンもいりません。そういった意味ではBUNKAタブー編集部の仰ることはわからないもでない、というのが冒頭の文章にもある私の考え。

しかし、それでも描かずにはいられないのは、SNSの流行に乗りたいという現代人らしい感情も勿論あるだろうが、「疫病を回避するため絵を描く」という行為自体が神仏に祈りを捧げるのと遠くない感情ではないか、と思ったのである。

例えば「いい人に出会えますように…」と縁結びで有名な神社でお参りをする。その時、一体どれだけの人がその効能を信じているのだろう。「出会いは神様が作ってくれる！」と心の底から思っている人は、実はそんなに多くないだろう。実際問題お参りしたとて良縁に恵まれない人だってワンサカいるし。お参りに行くぐらいならマッチングアプリに投稿して自分磨きでもしたほうがいいじゃん！という考えも否定できない。

それでも心の拠り所として、人というのは、神仏というか形のない何者かに祈らずにはいられない生き物なのだ。

以下は遠野物語でのいちエピソードである。

明治三陸大津波で妻を亡くした夫が、ある夜海岸で亡き妻と出会う。妻は一人ではなく、隣村に澄んでいた元カレ（この元カレも津波で亡くなっている）とふたり連れ立って歩いていた。
夫は亡き妻に「俺とお前には子どももいるじゃん。子どもが可愛くないのかよ」と詰め寄るも、妻は「今はこの人と一緒になったから…」と泣きながら去っていく…という何とも悲しい胸糞エンドの幽霊話である。（『遠野物語』に描かれる明治三陸大津波・参考）

これは単なるホラーではなく、生きている人間の心の話だと思う。
突然津波により妻を失ってしまった夫の千々に乱れた心を整理整頓するため、脳の何かが作用して見せた幻影ではなかろうか。（夢のない言い方ですまん）
妻が亡くなったやるせない悲しみや怒りを、元カレと一緒にいるという不貞の罪を妻に着せ、妻が自分を裏切った！と断ずることで、夫はとっちらかった気持ちを何とか整理しようと無意識に思っていたのではないだろうか。（勿論遠野物語にはこんな解釈は書かれていないので、私の全くの勝手な解釈です）

アマビエとは少し話題がずれたが、ことほど左様に人は不安定になればなるほどに見えない何かを作り出し、頼ろうとする。今このご時世にアマビエ絵を描く事などはその典型では無いだろうか。

｢ばっかじゃねーのコロナ収束祈願でアマビエなんか描いちゃってwwwww」と一蹴するのは容易いが、これは人間が人間たる上でごく普通の感情。カルトでも何でもない。
宇宙が生まれたのがビッグバンだという説も、誰も見たことがないんだから、その原理で行くと物理学だってカルトと同じになってしまう。

あ・もっと簡単な例えがあった。てるてる坊主だ。
あれなどは最も身近な「見えないものへの祈り」ですな。アマビエ＝てるてる坊主。わかりやすい図式ですね。

てるてるぼうずてるぼうず
あした天気にしておくれ
アマビエさんアマビエさん
早くコロナを終息させてください