ネーミング By南雲すみ

「名前を付ける」。この行為は、かなりしんどいと僕は思う。
 
子どもの名前。ペットの名前。人形の名前。名前を付けると、基本的にはそのものに愛着が湧いて、「大切にしよう」とか「大事に育てよう」とか思う。僕が将来子供にどんな名前を付けるのか、想像しづらいがその時になればそれなりに真剣に考えると思う。少なくとも、役所の受付で一分くらい考えた思いつきで提出することはない。
 
さて、文学部ということで小説を書く。その中には登場人物が必須となる。というのも、長い話であれば「彼女」や「彼」みたいな人称代名詞でページが溢れては少し読みづらいので、必然的に名前が必要になってくる。
 
最初に戻るがこれがけっこうしんどい。とりあえず、実体のない登場人物を考える。そしたら、物語の中でこれがどんな風に動き回るのか考える(僕は登場人物を先に考えてからそれに合うストーリーを考えるようにしています)。ストーリーを考えて、ようやく名前を決める。
 
さて、どんな名前にしようか。話の中で血縁や血統について言及する必要がなければ、登場人物の名前どうしに因果関係を持たせなくてよいし、苗字も違って構わない。
 
とりあえずこんな名前にしようか。そう名付けた瞬間、それに実体が生まれる。僕が小説を書く中で、この瞬間が一番不安だ。彼彼女に肉体が備わったかのように、妙に現実感が増す。さらに小説を煮詰めていくと、まるで目の前にいるような存在になる。時にはそれすら超越して、自分がその人物になったかのような感覚になる。
 
やっぱり名前を変えよう(創作だからできることです)。今度はそれが実体を帯びて僕の中に現れる。まるで六本目の指が生えたみたいに。だから、しんどい。
 
以前、「実念論」と「唯名論」について触れる機会があった。名前あるものは全て実在するのか、あるいは、名前とは実在を表さず「ただ名前が付いているだけ」なのか。
 
もともとは神の存在をどうするか、みたいな扱われ方だったらしい。
 
神様っているのかなあ。もしいたらなんて名前を付けようか。きっと愛着が湧く。

By南雲すみ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?