「知事、大変です」
「どうした」
「福井県がじわじわ県境を浸食しています」
「なんだと？」
「気が付いたら福井県民が県境沿いの土地を買い進めていました」
「いいじゃないか。滋賀に住めば滋賀県民だ」
「それが、税金を福井県に払い続けているんです」
「なんだと」
「知事っ」
「なんだいったい」
「京都府が」
「岐阜県が」
「三重県が」
「もう誰にも土地を売るなっ」
「そんな制限はできません」
「納税部隊を組織しろ」
「県職員に滋賀県民はほとんど残っていません」
「なんだと」
「知事ーっ。お逃げくださいっ」
　こうして、滋賀県庁は遊覧船「ミシガン」に逃亡し、わずかに残った滋賀県民も、ビアンカやべんてん、小さな漁船に移り住み、湖上の民となった。
「知事、これからどうやって生きていきます？」
「海賊だ」

（了）

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