母校の夢

「あなたの後輩ですが、一口五千円です」
「なにが?」
「寄付金です」
「お断りします」
 電話を切ってからなんの寄付か聞いてないことに気づいた。
 また電話が鳴った。
「いきなり切らないでください」
「悪い悪い。で、なんの寄付」
「野球部が七十年ぶりに甲子園に出場することになったんです。ぜひご寄付を」
「おれ、野球部OBじゃないよ」
「構いません」
「いや、こっちが構うから」
「こちらも忙しいんです。まだたくさん電話しないといけないので」
「そんなにたくさん寄付が来たら大儲けじゃん」
「儲けなんてありません。応援はたいへんなんです! 男女共学にしてチアリーダー部を作って法被作ってバス借りて」
「ごめん。話の腰を折って悪いけど、何年先の甲子園に出るの?」
「今年の夏です!」
「男女共学にするところからムリだとおもう」
「ううう。やっぱり」

(了)

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