ごっこ
リストラされて田舎に帰った。野原でぼーっとしていたら、女の子が生きたまま焼かれる姿を見た。
小学生たちのお葬式ごっこ。
遺体役らしい女の子を担いであたりを一周する。火葬場についた、ということらしい。
「それでは、喪主様、ボタンをお押しください」
「焼き上がるまで二時間ほどかかります。出口はこちらです」
などと言っているのがかすかに聞こえる。
もう夕方だ。夕食の時間だろう。
子どもたちは三々五々、散っていった。
だが、気になるのは小高い丘の中にあいた穴に押し込まれた女の子だ。彼女だけ、まだそこにいるような気がする。
私はおそるおそる近づいていった。
「きみきみ、生きてるか」
「おじさん、誰?」
穴から女の子が出てきた。
「東京から戻ってきたんだ。田山の家の者だよ」
「あー、田山のおじさん。東京で殺されたんだって?」
「殺されたんじゃないよリストラだよ」
「ふーん」
「きみはおうちに帰らなくていいの?」
「うん。うちはご飯遅いから。もうすこし死んでいく」
女の子は穴の中に戻っていった。
(了)
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