垂れ幕

 妻と散歩していたら、区役所の前に出た。
「働きましょう、死ぬまでは」
 区役所の建物にぶら下がっている大きな垂れ幕だ。
 ま、その通りといえばその通りなんだけど、お上に言われることじゃないよなあ。
 なあ?
「なんのこと」
 だからさ、あの垂れ幕。
「ああ、お気楽極楽ってやつね。杉並区らしいわよねえ」
 えっ。違うだろ?
「いーえ。ずっとお気楽極楽だけど」
 おかしないあ。
「見る人の心理状態を反映する心理垂れ幕でチュー」
 びすがこっそり呟いた。
 おまえには、どう見えてるの。
「色即是空でチュー」
 どういうネズミなんだおまえは。

(了)

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