【SS】友の会
ゾンビという言葉、比喩としては、なにも考えていない人間を揶揄するのに使う。
いつもの病院に行くと、
「最近、ゾンビが増えましてねえ」
という話になった。
ドクターはもちろん比喩として言っているのではない。脳波を測って言っているのである。
「ははあ。私以外にも」
「たくさんいますよ」
「脳波停止友の会でも作ろうかなあ」
「それはいい」
先生の目が輝いてしまった。
「ぜひ、その集会の様子を教えてほしい。といっても、プライバシーの問題があるから、誰がゾンビか教えるわけにはいかないけどね」
「それじゃ、ダメじゃないですか」
「教えるわけにはいかないけど、手の甲に黄色い蛍光ペンで×を書いておきましょう」
「気づかれますよ」
「なーに。相手はゾンビだ。気づかない気づかない」
バカにされた気がしたが、ほんとになにも気づかない人たちが街にあふれた。
声をかけてみた。
「私ゾンビなんですけど、あなたも?」
それでまあ、お金もないことだし、公園に集まろうということになった。時間は夜。家族が寝静まってから。
二十人ほどが参加したが、もともと同じ病院に通っているというだけの共通項。話題がなにもない。
二時間ほど、ぼーっと月を眺めていた。
「猫の集会みたいでした」
と先生には報告した。
(了)
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