樹木系
息子が世界樹のタネを手に入れた。
面白がってタネを庭に植えたみたところ、ものすごい勢いで成長し始めた。一日に三メートルは延びる。一ヶ月もたたないうちに、住んでいた家は押しつぶされてしまった。
こうなってしまったら、木に住むしかない。小鳥の巣箱を大きくしたような家を造っているうちに、高さは三百メートルに達してしまった。
「とーちゃん、どうやって買い物に行くんだよ」
「アホかおまえ。下見てみい。商店街、壊れとるやんけ」
「なんで」
「この木のせいじゃっ」
「あー」
「恨まれとるぞ。わしら、もう下におりられへん」
飢えた息子は幹にかじりついた。
「お、これ、うまい」
「ほんまか?」
水分だっぷりの繊維質だった。
「こりゃいいや」
と、機嫌よく暮らしているうちに、下のほうでどーんという鈍い爆発音がして、黒煙が上がった。
飛行機がぶつかったらしいが、世界樹の木は微動だにしない。
「な、なんか、息が苦しい」
息子が床をごろごろ転がった。
「むむむ。空気が薄くなってきたか」
私も意識が朦朧としてきた。
地球の栄養分をすべて吸い取った世界樹の木は、茂らせた葉に太陽光を受け、どこへともなく飛び立っていった。樹木系エイリアン、だったのかもしれない。
(了)
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