消失

 街を歩いていて、マンホールの蓋が空いたままになっているのに気づいた。蓋は盗まれてしまったのだろうか。
 ふだんなら一番先に落下していてもおかしくないのだが、今日はたまたま足下を見ながら歩いていたために、ぶじ通り過ぎることができた。
 後ろを振り返ってみる。
 マンガを読みながら小学生が歩いてきた。
「あっ、あぶないっ」
 と叫んだときには、小学生の姿はもう消えていた。
 落ちたのではなく、飛び上がっていったのだ。
 私はしばらく、青い青い蒼穹を眺めていた。
 小学生の姿は豆粒のようになって消えた。

(了)

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