見える化
家の前の道路をずっと工事していて、これは私の生きているうちには終わらないのではないかと思っていたら、ある日、忽然と自転車専用レーンがあらわれた。
「こんなものを作っていたのかー」
さっそく自転車を引っ張り出してきて、走ってみる。快適だ。このレーン、どこまで続いているのだろうかと思い、都心方向に向かってひたすら走ってみる。
自転車の数は増える一方だ。
二台併走できるくらいの幅なので、自然と遅い列と速い列ができる。私は無理せず遅い列に入った。
車道の隅をちょろちょろ走ったり、歩道をくねくねと走っていた自転車がぜんぶ合流すると、こんな数になるんだと感心する。
その日は新宿近くまで走って、帰宅した。これからは自転車通勤だな。
通勤に使い出すと、すぐに自転車専用レーンは当たり前の風景となった。
自動車は自転車をよけつつ走る手間がなくなり、歩行者は自転車に轢かれる危険がなくなって、道がすっきりしたかというとそんなこともなさそうだ。
自転車が一カ所に集まると、今度はいままで自転車が占めていたところをよくわからない者たちが走るようになった。車道でよく見かけるのは馬である。いままでどこに隠れていたのだろうと思うくらい多い。
歩道は歩道で、ジョギングする人が増えたように思う。ボードも増えた。
どうするんだろう。さらに乗馬専用レーンやジョギングレーン、ボードレーンなどを増やしていくのだろうか。するとまた変なものが出現するにちがいない。
どんどん対応して道幅を拡張していくとやがて都心は道路だけになる。その光景はちょっと笑える。
(了)
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