「りな、おとうさん、きらい」
「どうして」
「ちゃんとおはなししてくれないもん」
「いつもいっぱいしてるじゃないかー」
「いっぱいじゃなくていいの。ちゃんとして」
「むかしむかし、あるところに亀がいました」
「どんなかめ？」
「くさいかめ」
「りくがめね」
「りくがめはくさいから人間の子供にいじめられていました」
「うわーい。うらしまたろうだあ」
「おじいさんになってしまったうらしまたろうは、山へたきぎを取りに行きました」
「えー、おとひめは？」
「おとひめは川へ洗濯に行きました」
「海じゃないの」
「海水だとべたべたしちゃうからね。どんぶらこどんぶらこ。川上からおわんに乗った一寸法師が流れてきました」
「わかんなーい」
「そうか。じゃあ、流そう。一寸法師はそのまま流れていってしまいました。うわあああ」
「どうしたの」
「一寸法師が驚いているんだ」
「ふーん」
「橋の上を桃太郎が渡っていきました」
「おこしにつけたきびだんご」
「どうか私にくださいな。猿と豚と河童が家来になりました」
「鬼退治に行くんだね」
「いや、てんじくにお経をとりにいくんだ」
「おきょうってなに」
「えらいお坊さんの書いた巻物だよ」
「どうしてとりにいくの」
「宝物だから」
「あ、りな、わかった」
「なにがわかったの」
「てんじくについておきょうを開いたら、けむりがむくむく出てきて、ももたろうはおじいさんになりました」
「めでたしめでたし」

（了）

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