遊具いたずら禁止
高校生たちががやがや騒ぎながら公園に入ってきた。
しかしそこにあるのは看板だけだ。
「遊具いたずら禁止」
彼らはなんの冗談だという表情で顔を見合わせた。
ベンチひとつない公園でなにが遊具だ。
と、そこへ新聞をもったおじさんがひとりあらわれた。公園へ
入ってくると、柵のすぐ近くに腰を下ろし、足を組んで新聞を読み始めた。
高校生たちの目には宙に浮いているようにしか見えないのだが……。
次に入ってきたヒトは、腰を下ろしたかと思うと、すたた、すたたと前後に揺れ始めた。
「ブランコだ」
そのうちにわらわらと人が集まってきた。
誰かがよけろる。
「あ、ぶつかった」
と、高校生たち。
こけた人は顔をしかめながら、あたりをさわっている。
「丸い? あ、飛んだ」
「タイヤ飛びだ」
「なんだ、ここふつうの公園じゃん」
「おまえ、見えるの?」
「いや、見えないけど」
そのうち、全身を鉄さび色に塗った男が入ってきて小さな台座に登ったかと思うと、彫像のように静止した。
ここにきて、ようやく高校生たちにも男たちの正体がわかった。
「パントマイムじゃん!」
パート・パントマイマーたちが五時に引き上げると、公園はまたがらんとしたただの空間に戻った。
(了)
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