最弱忍者

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 総理府の調査により、伊賀と甲賀の隠れ里がいまでも存在していることが判明した。
 総理は里の長を呼び出し、手合わせを命じた。
「忍者は日本の誇る文化。最強の里を決めよう」
 ところがさすが総理府、役人のやることだけあって調査が杜撰だった。忍者の世界も政治家と同じく世襲制となり、弱り果てていたのである。
 当日、ふたりは刀の代わりのつもりか、スプーンとフォークをもって対峙した。
「伊賀隠れ里、十六代当主、伊賀毘沙門天。アホでござる」
「甲賀隠れ里、十六代当主、甲賀夜尿症。アホでござる」
「拙者、先端恐怖症でござる」
「拙者、パニック障害でござる」
「拙者、アロエ恐怖症でござる」
「拙者、骨粗しょう症でござる」
「拙者、口べたでござる」
「拙者、九九を憶えられないでござる」
「拙者、文盲でござる」
「拙者、重度の乱視でござる」
「拙者、四十肩でござる」
「拙者、童貞でござる」
 がく、と毘沙門天が膝を落とした。
「負けた」

(了)

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