びす不調

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 びすはたいてい、私の机の上の隅にちょこんと座り、ひげを震わせている。たぶん無線LANでなにかの情報をやりとりしているのだ。
 ただ、今日はひげが見えない。というより、顔が見えない。
 ネズミ用マスクとネズミ用ゴーグルをしたびすは出来損ないのエイリアンのようにしか見えない。
「インフルエンザかい?」
「熱があるでチュー。喉が痛いでチュー。伝染しちゃいけないと思って、完全防備でチュー」
「そういや、動物から人間にうつる病気って怖いんだってねー」
「ペストがそうだったでチュー」
「鳥とねずみが協力したら、人間なんてすぐに滅ぼせるよなー」
「エボラ出血熱も忘れちゃいけないでチュー」
「あれは猿だっけ? 腰から下げたきびだんご、猿とねずみと鶏を家来にした桃太郎は、鬼ヶ島に着く前に吐血して死んでしまいましたとさ」
「ひどいでチュー。こほこほ」

(了)

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