スパム屋

 奥さん、米粒です。
 うちの風呂にシロナガスクジラが迷い込んできました。
 旦那のパチスロ熱が一瞬で醒める。
 3分間で5000万円。
 寝ているだけでぶくぶく太る。

「あああ、ダメだ」
 私は頭を抱える。
 私はスパム屋のさらに下の階層に位置する一行屋だ。インパクトのある出だしを書いてなんぼの商売である。
 最初の頃こそあふれるようにでたらめが出てきたが、数年もたつとこのとおり。出がらししか出てこない。
 考え方を改めることにした。インパクトのある出だしなんて文芸的なことを考えるからいけない。適当に単語を出して、つなごう。そうだ、スパムソフトがメアドをランダム発生するように、私だって、文章をランダム発生させてやる。

 氷結。快感。権利落ち。馬糞。コンコース。ひょっとこ。ハウスダスト。花火。猿股。柱時計。急騰。ホームレス。半額。ラテ欄。ナースコール。保湿ティッシュ。わらじ。牧師。FX。

 はあはあはあ。列挙って意外としんどいなあ。とりあえずこれくらいでいいとして、結合しよう。

 権利落ちの馬糞、いまなら半額。
 ハウスダストを氷結、牧師様も愛用の猿股。
 柱時計花火、ラテ欄を燃やす。

 これでいいや。深く考えずに、はい、送信っと。
 返信が来た。
「スパムを送ってくんな」
 おまえに言われたくないよ。

(了)

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