赤信号

 青梅街道の交差点の信号待ちは長い。
 じっと待っていると、強烈な日光にめまいがしてくる。
 地下から人がどっと湧いてきた。
 地下鉄から出てきた人たちだろう。
 すこし遅れてくる人たちはエレベーター組だ。
 大きな乳母車を押しているおかあさん。
 妻が乳母車の中を覗き込んで、
「ぎゃーっ」
 と叫んだ。
 どうせ犬か猫だろう。よくいるじゃないかと思い、走り去る妻を茫然と見送る。なにをそんなに驚いているのか。
 振り向くと、不審げな顔をした鰐が私をじっと見ていた。
 これは逃げるわ。
 
(了)

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