家族三人が行楽に来ている。
　野原にシートを敷いて、お弁当を食べて、五分で飽きた。
「空気がおいしい」
「うん」
「風が気持ちいい」
「うん」
「緑が緑や」
「うん」
「空が青い」
「うん」
「おまえらー」
　母親がキレた。
「ちょっとは自然を楽しまんかーい」
「だって、なにも起きないんだもん」
「あ、とうちゃん」
「うん？」
「とんぼ」
「あ」
　三人で指をくるくる回し始めた。くるくるくるくる。
　やがて飽きたのか、とんぼは若干ふらふら目に飛び去った。
　三人はくるくる回した指を持てあまして、お互いに向けた。
　くるくるくるくる。
　どさっと同時に倒れた。

（了）

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