【ショートショート】ネ校生
「はよ起きろやー」
と毎朝恒例の怒号が聞こえてきた。大輔は「あああ」と呟いて寝返りを打った。
「学校行きたくねー」
横に寝ていた猫のりんごちゃんが、
「ほんとに?」
という顔をした。
人間並の知能をもつ猫だ。喋れないけど。
「代わりにいきましょうか?」
とりんごちゃんが言った。いままでは喋らなかっただけか。
大輔はびっくりして、おもわず、
「いいの?」と聞いた。
りんごちゃんは「もちろん」と言って、カバンに教科書を詰め始めた。
「まだ来んのかー。飯、できたぞー」
父はまだ一階から怒鳴っている。
りんごちゃんがカバンを背中にたすきがけにして、とんとんと階段を下りていった。
「お、大輔。やっと起きたか。って、おまえ、りんごやないか」
「はい。お兄ちゃんはまだ眠いそうなので、学校へ行ってきます」
「おい。待てって」
父はりんごちゃんに小銭を渡した。
「これで電車に乗れ」
あっという間に午後になり、りんごちゃんが帰宅した。
「歯科検診のプリントです」
といって、カバンから紙を取り出し、りんごちゃんは大輔の部屋へ戻っていった。
(了)
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