締め出し

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 地デジチューナーにB-CASカードを挿入しないと使えないように、ネットは住基ネットカードを挿入しないと書き込みできないように法律が改正された。いわゆる実名法の成立である。
 困ったのは住基ネットへの参加を否定していたいくつかの地方自治体だ。東京でいえば、杉並区だ。
「インターネット空白地区になるのも面白いけど、どうなるのかねえ」
「わからないでチュー」
「聞いてみろよ」
 杉並区の開発した電子ネズミは、常時接続で杉並区のコンピュータと接続している。
「他の人には言わないでほしいでチュー」
 とびすは言った。
「お、やっぱりなにか知っていたか」
「急遽、総務省へ住基ネットへの参加を打診しましたが、いまさらなに言ってんだと軽く断られてしまったでチュー」
「わははははは」
「笑いごとではないでチュー」
「じゃあどうするんだよ」
「杉並フォーンのために作った高速回線網を利用して、独自に杉並インターネットを作るでチュー」
「それ、インターネットじゃないだろう」
「日本以外の国とはつながるからいいのでチュー」
 これを契機にして、ネット上に仮想国家ニッポンが立ち上がった。もちろん、ここでは実名法は無効だ。そのため、へんな外国人、ありていに言えばオタクのたまり場と化している。
「スカイ・クロラをはやくデンマークでも公開してほしいです」
 というような書き込みばかりだ。
「するわけないだろ」
 と杉並区民は笑っている。
 なんだか昔のインターネットより、いまのほうが楽しいような気がするのは気のせいか。
 
(了)

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