あんぱん

「鈴木さーん。宅配便でーす」
「はーい」
「ここにサインお願いします」
 ちょっと大きめのダンボール箱が届いた。
「どこから?」
 息子がかあちゃんに聞く。
「西友オンラインストアやって。誰か頼んだ?」
「おー、オレやオレや」
「とうちゃん、これなに」
「あんぱんや」
「あんぱん?」
「知らんか」
「知ってるけど。コンビニで買うたらええやん」
「特売やってん」
「あんた、ネットで買い物にしたら送料がかかるんやで」
「オレのことアホやと思てるのか。送料無料になるようにきちんと百個買いました」
「アホ」
 妻と息子が同時に叫んだ。
「あんたが全部喰え。一日三食喰え」
「冷たいこというな。一ヶ月もかかったら腐ってしまう」
「冷凍しといたる」
「かあちゃん、うまいっ」
「ん?」
「冷たいこというた」
「くそー」
 とうちゃんが逃げた。
「あんぱん持ってけー」
 家族の罵声が後ろから追ってきた。

(了)

お気に召しましたら、スキ、投げ銭をよろしくお願いします。

続きをみるには

残り 78字

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

新作旧作まとめて、毎日1編ずつ「朗読用ショートショート」マガジンに追加しています。朗読に使いたい方、どうぞよろしくお願いします。