深川平均225

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 郵便受けに手紙が入っていた。
 ほとんどの通知がメールで来る中、いまどき手紙とは珍しい。
 びすの目が赤く光った。
 スキャンしているらしい。
「なんでチュか、これは」
「あなたは深川平均225に選ばれましたって意味わかんないよなー」
「225という数字がひっかかるでチュー」
「どうして?」
「日経平均って言葉があるでチュー」
「東証第一部の株価の平均だろ」
「違うでチュー」
「えっ」
「あれは日本経済新聞社の選んだ225銘柄の株価指数なのでチュー」
「えーっ。なんか公的なものかと思ってた」
「日本の経済界を代表すると思われる銘柄が恣意的に選ばれているのでチュー。東証第一部に上場している企業は約1700社。そのうち1500社がぼろぼろでも日経銘柄の225社の株価だけ上がれば、日経平均は上向きでチュー」
「そんな仕組みだったのか。その銘柄ってのを見せてよ」
 びすの目が光り、今度は壁にデータを映し出した。
「けっこう投機的な企業とか入ってるなー。ほんとにこれでいいのか」
「潰れたら入れ替えればいいだけなので問題ないでチュー。問題は、225という数字でチュー」
「あ、じゃあ、深川平均ってのも」
「誰かが日本を代表する深川を225人選んでいるでチュー」
「誰だろ」
 手紙の送り主を確かめた。日本深川新聞。
「べつに日本ってつけなくても深川は日本にしかいないだろ」
「中国にもあるでチュー」
「あ、そうか。こんな新聞、ほんとにあるのか」
「検索したらあったでチュー」
「ほんとに? オレの収入とかバレてるのかな」
「本日の深川平均は、身長162センチ、体重65キロ、独身率66.5%、失業率18%」
「そっちか」
「小太り。肥満傾向あり。非モテ系、ニート率高し。要注意だそうでチュー」
「ほっといてくれ」

(了)

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