宅配便

 ぴんぽーん。
「どなたですか」
「宅配便です」
 といわれ、びびる。
 先週だったか、弟から電話があった。生家を建て替えるという。
「あの家、なくなっちゃうのかあ」
「あ、ほしい? じゃ、送るわ」
 なんの冗談かと思ったら、ほんとに送ってきた。
 おそるおそる扉を開けると、宅配便の人が
「お荷物でーす」
 といった。
 宅配便のトラックは見たこともないでかいもので、木造二階建ての生家を積んでいる。
「あの、無理ですから。うち十八坪しかないんで」
「大丈夫です」
 何十人も同じ制服を着た人がわらわらと出てきたと思“ったら、荷物を我が家に運び込み始めた。
「いや、無理ですから、ほんとに」
「大丈夫大丈夫」
「こっちの玄関よりそっちの玄関のほうが大きいでしょう」
「こんなもの押し込めば」
 めりめりめり。
「うわわわ」
 私はあわてて逃げた。
 そのうち、
「判かサインをくださーい」
 という声が聞こえて、納品書が手渡された。サインして戻した。
 自室から外に出るには一回二階へ上がって別の階段を下り、トイレの扉を開けないと玄関にたどり着けない。面倒だが、家の中が広くなったのは感謝している。
 まだ発見できない部屋もあるから、しばらくは探検の毎日だ。

(了)

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