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【SS】名無しの神様

 へんな気配がしたから最初はストーカーかと思ったの。
 勇気を振り絞って、
「誰?」
 と声をかけてみたら、
「わしは神じゃ」
 という返事。
「なんの神様?」
「生まれたばかりの神じゃ。名前はまだない」
「ふうん。神様って、なにができるの」
「願い事を聞くのがわたしの仕事だ」
「わーい。お金ほしい。いい男と結婚したい。あ、待って。結婚できるなら、もっと遊んでからのほうがいいかな。海外旅行とか温泉とか。ねえ、いっしょに行かない? そこでゆっくり願い事を考えるからさ」
「いいぞ」
 わたしは新幹線のチケットを二枚買って神様といっしょに温泉に出かけた。三日間喋り続けた。
「言うだけ言ったか?」
「うん、言った」
「すっきりしたか?」
「した」
「じゃあな」
 というと、神様は去っていった。

(了)

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