【ショートショート】孤独な死
家の横が更地になったのは半年くらい前のことである。
古いアパートが解体され、小さな土地が夏草に覆われた。
なかなか買い手がつかないなあと思っていたら、裏手のガソリンスタンドが潰れた。半年くらいかけてここも整地され、「SALE」の看板が立った。
数年後、ふと気づくと、家の回りが全部更地になっていて、しかも売れない。
大都市の真ん中なのに、潮が引くように建物が潰され、真っ平らな土地になっていく。
「畑にでもすればいいのに」
「まったくよねえ」
と妻と話していたが、コンビニやスーパーまで消えるにいたって、生活に支障が出始めた。
ぽつんと建っている我が家の前までゴミ収集車が来てくれるのが申し訳ない感じである。
そんな我が家もとうとう更地になる日がやってきた。
なぜ土地を売ってもいないのに更地にされるのか、理由はわからない。
朝起きると、私だけが土の上で眠っていたのだ。
空には太陽がさんさんと輝き、視界のなかには地平線しかない。私だけが残ったということは、やはり原因は私だったのだろうか。
歩き出すと、視界の端で土煙が立っている。遠くの市街がばらばらと崩れているのかもしれない。
「モーゼかよ」
と呟いていると、自衛隊の攻撃を受けた。
私は怪獣あるいは奇怪な超能力者として死ぬのか。
ふつうの人間であり、市民であったのに。税金だっていやいや支払っていたのに、と、そこだけが残念でならない。
(了)
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