督促

「税金を払ってください」
 と役所からメールがくる。
 どうせコンピュータが自動生成しているのだ。
「ないものは払えません」
 と返信する。
「税金はみんなで公平に分担するものです。あなたには昨年、322万567円の収入がありました。税金を支払ってください」
「可処分所得はぜんぶ本を買っちゃった。それあげるから勘弁して」
「書籍は物納の対象となりません。お金で支払ってください」
「だからお金は本になっちゃったの」
「紙幣は本にはしません」
「そういう意味じゃなくて」
「あなたの昨年の支出をすべてリストにしてお送りすることもできるんですよ」
「そんなスパム、送ってくるな」
「配偶者の方に送りましょう」
「やめろ」
「あなたは酒もタバコも飲まない。公営ギャンブルもやらない。ガソリンも買わない。ふつうの人より税金が少ないのです。請求分くらい支払いなさい」
「威張るな」
「いうことを聞かないなら、ぜんぶ間接税にするぞ。消費税率80%だ」
「バカかきさま」
「ガタガタいうてると、尻の穴に赤土詰めてほうれん草のタネ植えて収穫するど、こら」
 どんどん担当コンピュータの質が下がっていく気がしたので、手を打つことにした。
「わかった。払うよ」
「最初からそういえ」
「でも、全額は無理。足りない分はヨドバシカメラのポイントで勘弁してくれないか」
「いいよ」
 えらくあっさりした返事だ。うちの区のコンピュータはどうもネズミとヨドバシカメラのポイントが大好きらしい。

(了)

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