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【SS】七五三

 息子が五歳の誕生日を迎えた。十一月に入ると、七五三なんだから神社に詣でなさいよと親から電話があった。そういう伝統的な行事はなにも知らないだろうと見越してのことだ。
 案の定、私は知らなかった。
「そういや、近所に神社があったよな」
「天祖神社ね」
「あそこでいいや」
「頼んだらなにかしてくれるのかしら」
「明日行って聞いてみよう」
 幸いにもいい天気になったので、持っている中では一番いい服を着せて、神社に行った。
「息子が五歳の誕生日なんですが、なにかしてもらえませんかね」
「いいですよ」
 神社の人は簡単に答え、ふだんは賽銭箱の向こうにあって、拝むだけの本殿にあげてもらうことができた。
 息子、大喜び。
「今日は特別な日ですから、ご神体をお見せしましょう」
 といって箱を開けると、中から老猫がのっそりと出てきて、息子の膝の上でヒルネした。
「ありがたやありがたや」
 神社の人が祈りだしたので、私たちも手を合わせてありがたやありがたや。
 一万円を寄進し、千歳飴のおみやげをもらっての帰り際、ふと振り返ると、鳥居の前には天祖猫社と書いてあった。
「うわあ、間違えたあ」
 でも、いまさら取り消しってわけにもいかないしなあ。いいか、猫でも。

(了)

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