「姫川刑事、現場です」
　現場に不似合いな華麗な衣装で登場した姫川は顔をしかめた。
「いったいいくつ死体がある」
「さあ、バラバラですから。持ち帰ってつなぎあわせてみないと。抜けているものもあるかもしれませんし」
「靴跡も多いな」
「なにしろ陸上のトラックですから。じわじわ足形をとりながら接近しているので、まだ歩けるのはこのあたりだけです」
「警察に対するいやがらせか、この事件は」
「事件なのか事故なのか、それさえわかりません」
「あー、めんどうくさい」
「ですから、姫川さんをお呼びした次第で」
「わかった」
　と、姫川刑事は魔法のスティックを取り出した。
「犯人はあなたでいいわね」
「あわわわ。やめてください。犯人を作るんじゃなくて、探してください」
「無理よ」
「えっ」
「魔法で犯人を作ることはできるけど、探すのは無理」
「うわ、この人はでっち上げ専門だったか」

（了）