ボタン

 バリカンで私の頭を丸刈りにしていた妻が「あっ」と叫んだ。
「なになに」
「ここになにかボタンみたいなものが」
「ホントに?」
「たんなる肉の盛り上がりかもしれんけど。押してみよか」
「やめといて」
「えいっ」
 あっ。
 私が動きを停止したので、妻はびっくりしたみたいだ。
 もう一度ボタンを押したら、元に戻った。
「停止ボタンみたい」
「なにが停止するってい」
 それからおもしろ半分によく停止させられている私である。

(了)

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