つきまといにあったよ~って話


「お友達になりませんか?」「よければこの後お茶でもどうですか?」
そんな言葉で話しかけられた時、どうしますか?
「イヤです」「キモ」「(無視)」……様々な考えが思い浮かんだことでしょう。
けれど、もしも。もしも、突然、普通に日々を過ごしていて、何気ない場所で、道でも聞くかのように寄ってこられて、話しかけられたら、果たして無視なんてできるでしょうか? イヤ、キモ、なんて言えるでしょうか?
できる! と答えられた方。羨ましく思います。
私はできませんでしたので。

某日、京都河原町、アニメイト前にて。
私は推しのCDの予約をして、ウキウキとした気持ちでアニメイトの階段を降りました。多忙な日々でしたので、店頭予約できるかも怪しいなあ、と思っていたところでしたので、偶然アニメイト付近に行く用事ができ、大変、それはもう大変うれしかったことを覚えています。初回生産限定盤の予約が出来たんです!
友人に「予約できたよ~」とラインするべく、アニメイト前でレシートを撮っていました。背後には中学生二人組。先輩後輩なのか、「俺が今日はおごったるよ」と会話をしていました。愛らしかった。そんなに小さいのに、おごるおごられが発生しているだなんて。見る人が見れば健全ではないのかもしれませんが、これもまた青春の一ページだと。そして、私のこのレシートだって、青春なのだと。
写真を撮り終わって、次の予定に向かおうかと顔を上げました。次は本屋にて、大好きなマンガの新刊を買う予定でした。とても心が躍っておりました。
ふと、アニメイト前に居た男と、偶然目が合いました。合わせるつもりはなく、顔を上げたらぱっと目が合ったのです。そんなの、いつだってあることじゃないですか? けれど、その男はこちらに近づいてきました。なんだか困ったようなまなざしでした。

余談ですが、私はよく道を聞かれます。ビラ配りのバイトをしていると、異様に道を聞かれます。以前のバイトでは、とてつもなく絡まれました。仕事ができないまま、20分近く拘束されました。
すっごく不快なルッキズムの話をしますね。恐らく私が声をかけられやすいのは、黒髪黒目でメガネ、中肉中背、顔も普通くらい。要は真面目で、かつ親しみやすいのでしょう。
私がもし、ドピンクの髪だったら、話しかけられなかったのではないでしょうか。それはそれで違う問題が発生しそうですけどね。
私は話しかけられやすいのでしょう。しかし、その特性を裏返したところで、誰かには話しかけられるでしょう。生きていれば、いつかきっと。それではきっと、外見以外に問題があるのです。それはなんなんでしょうね。

話を戻しましょう。その男性は、私に話しかけてきました。
「アニメイト……」
声が小さく、それしか聞き取れませんでした。京都は旅行客が多い場所、すなわち道を聞かれることも多い。私はアニメイトの場所を聞かれているのかと思い、
「はい?」
と聞き返しました。そうすると、男は少し、嬉しそうにしていました。
「アニメイトから出てきたでしょ」
「ああ、そうっすね」
ふと、私の脳裏に「道じゃない!」という思考が浮かびました。けれど、まだ私は「取引とかかなあ」と思っていました。

ここでいう取引とは、ランダムグッズをその場で交換する行為のことです。アニメグッズはわりとランダムグッズが多く、同じ箱に14種キャラクターが入っていて、中身が見えないまま買う、ということが多発します。京都河原町のアニメイトではあまりありませんが、梅田とかだと発生しているな~、と思います。要は交換です。

「僕もアニメとか好きでさ」
「はあ、そっすか」
「よければ、あの、彼氏とか居なければ、友達にならない?」
背筋が凍りました。現存しているんだ、と思いました。こういう人、都市伝説だと思っていました。現実に、しかも自分の身に起こりうる話だと思っていませんでした。彼氏とか居なければということばで、下心があるのは分かり切っていました。
「あー私彼氏居るんすよ」
嘘です。残酷な嘘です。誰も幸せになりません。誰も幸せにならない嘘をつきました。むしろ私の方がダメージです。
「あーそうか、残念。僕、メガネキャラとか好きでさー。」
私はメガネをしていました。びっくりするくらい、ぞわっとしました。
「どこで知り合ったの?」
私は甘かった。彼氏がいる、というワードで、引き下がるかと思っていました。けれど私はこの時には、興味の方が勝っていました。この人、おもしれ~男、と思っていました。(というか、「ワ! これ小説のネタになるかもしれん!」と思っていました。今から考えると、びっくりするくらい愚かですね~。)

「ネットで……」
「Twitterとか? あ、今はXなんだっけ。僕そんなSNSとかやらなくって」
「そうっすね。タグで」
「へー、でも会うんだ。現代って感じだね」
「まあ。半年通話して、住み近かったんで」
「付き合って何年?」
「一年くらいじゃないっすか?」
「へー。どんな人なの? イケメン?」
「はい。わりと?」
「年は?」
「同じくらいっすよ」
「へー。ちなみに何歳?」
ここまでで、私の彼氏は
『SNSで知り合った』『付き合って一年』(知り合って一年半)『イケメン』『同年齢』
という設定になりました。私だってこんな彼氏が欲しいです。けれど普通にネットで出会って半年の男と付き合うのちょっと嫌なのでやっぱいいです。四年くらい欲しいよね。
さて、私は年を聞かれて、
「いや。秘密です」
と答えました。女性(私が考えるステレオ女性)って、年齢言いたくない人多くないですか? 女性に年齢を聞くのはタブーなんてことばも、聞いたことがあります。ですから、引き下がるかと思いました。
「いやいや、いいじゃん。教えてよ」
よくねえよ。
良くないです。貴方はよくても、私はよくない。この時の私は、もう漫画を買いに行きたい欲求でいっぱいでした。早く買いたい。もう出版日から何日経ってると思ってるんだ。
「まあ、新卒二年っすよ。というか私、四時から予定あって」
という、嘘です。けれど本当です。漫画という予定がありました。
「そっかー。お友達とか」
「いやちょっと時間ヤバくて。すんません。また」
ここで終わった、と思いました。丸善に向かうべく、蛸薬師通を横切り、ドンキを左に曲がりました。
「ヤバい男居て草」と、Twitterで呟きました。当然彼氏なんて居ません。ほぼリア友だけの鍵垢です。
けれど、面白い。とも、思っていました。絶対に近くには居てほしくないけれど、遠くに居たら面白いタイプの人種だ、と思いました。失礼でしょうか? 失礼なんでしょうね。

けれど、悲劇は続きました。
「ねえ」
後ろから声がかかりました。先ほどの男でした。
「どこ勤めてるの?」
そこで私が感じたのは、恐怖でした。何も出来なかった。
「アパレル……っすね」
「アパレルかーおしゃれだね」
男より、少し前を歩いていました。私の気を引こうとしているのか、私の二の腕にボディタッチをキメてきました。何度も何度も。私の二の腕を触ってきました。
「イヤ全然」
「働いて何年?」
「……いや」
「教えてよー」
「二年くらいっす」
「ベテランだね」
「新人っすよ」
嘘です。私はピッチピチ♡の大学生です。アパレルにも微塵も興味はありません。アパレルの人たち、ごめん。目の前に服屋さんがあったから。ごめん。
「彼氏は?」
「職種っすか?」
「うん」
「……まあ、エアコン修理とか。空調系……」
存在しない彼氏に、新たな情報を足してしまいました。空調の人たち、ごめん。アニメイトに入るまで聞いてたラジオで、エアコン壊れたってパーソナリティが言ってたから。ごめん。
そこで、私の目の前には、丸善が目に入ってきました。(正式には京都BALですが……)
「すみません、友達待たせてるんで」
と、BALに入ろうとする私に、ついてこようとする男。
「え、友達とか」
「ほんとすみません」
そこでBALに入る私。ここでついてくるようなら、適当な人に助けを求めるのも辞さない、と思っていました。

しかし、男はついてきませんでした。何度も何度もBAL内を行き来し、後ろを振り返っても、居ませんでした。それでも、不安でした。BAL内に友達は居ません。もしこの建物内に男が居たら、一人でいる私を見かけ次第、また話しかけてくるでしょう。
そこで、私に光が差しました。“腹痛”です。マジで死にそうなくらいの腹痛が襲ってきました。そこで、私は気づきました。女子トイレなら、絶対に入ってこれない。
私は女子トイレに入りました。オペレーション・ウンコです。マジでお腹が本当に痛く、結局30分、撒く意図もなく籠っていました。死ぬかと思いました。けれど、この時ばかりは救いでした。ありがとうウンコ。マジで愛してる、ウンコ。
BAL内で漫画を買って、ついでにショッピングをしていたら、入って一時間経っていました。外に出ても、男の姿はありませんでした。一件落着です。

この件で一番、私の身を守ったのは、ウンコです。あとついでに言うと漫画です。そして、私のコミュニケーションを助けたのは、CDです。この場を借りて感謝しておきます。ありがとう。

そして、男。二度と会わないことを祈っています。
貴方にもバックグラウンドはあるのかもしれませんが、少なくとも、私はこの件で、一日経った今でも怖いですよ。冷や汗出ます。あの後、男性と出会ったとき、怖い、と思いました。初めて自分が生物学的に女性であることを悔やみました。メガネをかけていたことを悔やみました。別に好きでメガネをしているわけじゃないし、できればコンタクトにしたい。(私が怖い怖いと言ってやってないだけなんですが~~~)
別に全部の男性がこうであるということではない。私はこの男にキレているのです。私はこの男に対し、今もキレてます。なんなんだ? 
けれど、ほんとに、注意しないといけないんだ~と思いました。私は一人旅を好みます。今まで一人旅していても、悪意にさらされたことはありませんでした。女性であることに「きっしょ~」と思ったのは、冬でもスーツがスカートなことくらいでした。
私は心が完全に女性ではありません。私は性別がありません(と、自称しています。別に公言はしてませんが)(アレ? ここで書いたことで公言になってる? ワロス)。
けれど、私は、生物学的には女性なのだ、と。ある一定の人から見れば、「ねらい目」なのだと、再確認させられました。知らしめられました。

私はこれからも一人旅はやめませんし、オタクもやめません。人生なので。
けれど、まあ、気をつけないといけないんだな、と思いました。

で終わらせてたまるか!!!!!!!!!! 勝手に生きさせろ!!!!!!!!!!! その辺に生きてる女性は彼女候補ではないんだぞ!!!!!!!!!! あと年齢聞いてくるな!!!!!!!!! メガネかけてるからって対象にしてくるな!!!!!!!!!! 視力よこせ!!!!!!!!!!!!!!! マスクメガネだと曇って曇ってめんどくさいんだよ~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!

ということを書き綴ったノートでした。今回私は一応女性だから女性→男性への嫌悪について書いたけど、別に逆もあり得るだろうし、ある程度自衛して、皆で世界に中指立てていきてこ~ね。
あと今回、普通にこわいよ~と思いながら、手を震わせながら書いたから、抜けとかあるし、文章も支離滅裂だと思う。すまんとは思ってる。
また時間空いて「クソみてえないい思い出だったな~!」と思える日が来たら、加筆修正するかも。とにかく泣き寝入りしたくなくって。

では、ご清聴ありがとうございました。ウンコ最高!


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