日本の百貨店がラグジュアリーECで成功しない理由
こちらのnoteではファッション業界の最新ニュースを1週間に5本程度解説し、その先に起こり得る事や豆知識を盛り込んでご提供いたします。
先週のピックアップニュースは下記の通りです。
・日本の百貨店がラグジュアリーECで成功しない理由
・バロックジャパンのWeb戦略がわかりにくい件
・TOKYOBASEのゾゾ依存度はまだまだ高まっている?
・やっぱり長続きしないインフルエンサー系サービス
・TSIホールディングスの上野商会買収は正しい戦略か?
日本の百貨店がラグジュアリーECで成功しない理由
英百貨店セルフリッジ17年通期は増収増益 デジタルが好調で売上高11.5%増
英百貨店セルフリッジ(SELFRIDGES)の2018年1月通期決算は、売上高が前期比11.5%増の17億5000万ポンド(約2590億円)で、営業利益が同0.5%増の1億8100万ポンド(約267億8800万円)と増収増益だった。 小売業界の不調にもかかわらず、店舗とEC両方に継続的に投資をしている成果が出ているという。特に17年度はデジタルの成長が目覚ましく、中国語対応のウェブサイトの構築やアンドロイドスマホ用アプリの開発、またセルフリッジプラス会員向けの英国内および海外の配送サービス強化への投資が功を奏したという。
イギリスの百貨店であるセルフリッジが業績好調という事で報じられてるのですが、理由の一つに「ECへの投資」が挙げられてます。僕の周りのファッション好きの方々(特に女性)はインポートブランドで欲しいアイテムがあると海外のラグジュアリーECをくまなく探していますが、その選択肢の中にセルフリッジやニーマンマーカスなどの百貨店も含まれてたりします。
一方、日本の百貨店なんですが、ブランドのラインアップからコンテンツから全然手付かず感がすごいんです…。
試しに伊勢丹を見てみましょう。他国のラグジュアリーECと比較するとブランド数も商品点数も少ないしまさにハリボテ状態。(衣料品が特に少ない)消化仕入れなんだからしょーがないですね。在庫リスクも負ってくれないのに、Webリテラシーが低そうな百貨店側に誰が商品を担保してくれるのかって話です。
しかもブランドによってはサブドメインに飛ぶという謎仕様。
こんな状態ですから、もうちょっと海外の百貨店を見習ったらいいと思うんです。という訳で、今回はセルフリッジのECサイトと伊勢丹を比較してみる事にしました。
○トラフィック
セッションが4150000と、伊勢丹(約10万セッション)の40倍以上のトラフィック。やはりハリボテでは結構な差がついてしまいますね。ではその内訳を見ていきましょう。
○集客経路
・セルフリッジ
セルフリッジの集客経路は非常にバランスの取れた結果と言っていいんではないでしょうか。特別どこかに偏りがありすぎる訳ではないので、広告もメルマガもソーシャルからもそれなりに集客ができています。ソーシャルの割合は3%未満と少ない印象がありますが、セッション数は
200000セッションあります。
ソーシャルの内訳は下記の通り。やはり海外のサイトってYouTubeがソーシャルでは一番の集客経路になってるところが多い。
YouTubeのチャンネル登録は8000人弱。思ったより少ないですが、
再生回数半端ない…。ショートムービーが非常に再生回数多いんですが、投稿の頻度はめっちゃ少ないです。登録者数少ないのはこれのせいか。。ただ、それでもここからサイト流入で月間100000セッション稼いでるんだからすごい。
Twitter 338,776
Facebook 465,626
Instagram 842,000
※2018年10月14日調査
その他のソーシャルはしっかり投稿頻度も高く運用されています。やはりInstagramからの流入は少なく、サイトへの集客はYouTube、ブランディングはInstagramという位置付けでしょうか。インスタ経由で店頭への送客は実現されていそうですが。
・伊勢丹
対する伊勢丹はどうなのかですが、
思ったより分散されている様子。ソーシャルちょっと手を抜きすぎな感ありますが、、
やはり5000セッション以下。。
ソーシャルアカウントの内訳はこちら。
Twitter 26532(伊勢丹公式)
Facebook 17469(新宿本店)
Instagram 見つからない…。
ていうか普通フッターとかにリンク貼ってるんですが、サイト内でリンクも見つからず。。これはあかん…。一応毎日投稿はしているみたいですが、工夫されている印象はありません。
リファラルの数字がやけに大きいのでどこから経由か見てみますと、
https://www.mistore.jp/onlinestore/index.html
三越伊勢丹のトップでした。ここから「三越」と「伊勢丹」に分かれるようです。
つまりドメインが、
https://mitsukoshi.mistore.jp/
と、
のサブドメインでわかれてる。これhttps://www.mistore.jp/isetan/ みたいにサブディレクトリで切った方がよかったんでは。mistore.jpが強化されず分散されているので機会損失起こってそうな気が。。。更にラグジュアリーのみ、
で運用。(ノレンノレンというラグジュアリーECで発足したはずなのに、いつの間にか「ISETAN MITSUKOSHI LUXURY」という店名になってますがドメインはそのまま)
集客の内訳は上記のような結果でした。伊勢丹はドメインの運用とソーシャルに問題ありそう。その他、セルフリッジが優れてると思う点をいくつかあげていきます。
○コンテンツがちゃんと作り込まれている
「物を売るためには情報量」と再三繰り返しておりますが、海外のラグジュアリーECはこれを非常に大事にしている印象があります。上記記事にもありますように、ヴィジュアルも記事も商品を売るためにしっかり作り込まれています。これって簡単に見えてすっごく大変なんです。これだけ作るのに、
・スタイリング
・撮影
・バナー制作
・画像レタッチ
・ライティング
・コーディング(CMSの場合は無し)
が最低必要ですし、更新頻度も落としてはいけません。動画を掲載する場合は動画編集も入ってきます。このあたりのコンテンツマーケティングは日本の百貨店のみならず、ECモールでもできてないところがちらほら見られます。アパレル企業のECサイトが一部ちゃんとやってるくらいですね。
○配送情報がちゃんと海外に向けられている
当然と言えば当然なんですが、海外に向けての配送料などの情報がちゃんと記載されていてわかりやすい。日本の百貨店はここを想定していないので、国内のみのシッピングとなっています。インバウンド多いんだったら結構重要な気もしますが。。
問題があるとしたら、ラグジュアリーを取り扱っているのにも関わらずサイズガイドに関してセルフリッジはちょっと情報少ないような印象。ただ、コンテンツの作り込みにはかなり手間暇をかけています。余談ですが、内装とか什器とかも凝ってますね。
日本の百貨店は消化仕入れをやめない限り、取り扱いブランドの在庫が潤沢になる事も無く百貨店社員の製品への理解も深まりにくいので、ここには絶対到達できないんだろうな…、という印象しかありません。優れたベンダーを抱えようと、根本を変えないとEC強化はいつまでたっても実現できないでしょう。
バロックジャパンのWeb戦略が非常にわかりにくい件
バロックジャパンのEC強化策――マーケットプレイス化やプラットフォーム化戦略とは?
「マウジー」や「スライ」などレディース衣料を中心に展開するバロックジャパンリミテッドは、今期(2018年1月期)を初年度とする4カ年経営計画でEC事業に本腰を入れる。今後4年間は近年のEC事業の伸びを上回る年率20%程度の成長を掲げ、17年1月期のEC売上高74億4500万円に対し、21年1月期はほぼ倍となる160億円規模を計画する。
バロックジャパンがWC強化を掲げ、下記のような施策を実施していくとの事です。
・自社通販サイトのマーケットプレイス化
・ブランド別通販サイトやアウトレットサイトの新設
・EC専用ブランドの強化
各々の狙いとしては、
「自社通販サイトのマーケットプレイス化」→ トラフィック拡大・SKU数担保
「ブランド別通販サイト」→ ブランディング強化
「EC専用ブランドの強化」→独自性担保
あたりかなぁと思うのですが、それよりも普段からずっと気になっている点がございまして、、、
○マウジー公式サイトとブログ運用法
これが個人的にとっても謎なのです。
マウジーを例にあげてみますが、
公式サイトが上記。そしてブログをクリックすると、
一覧ページがameba ownd。そして更に各記事を見てみますと、
こういう感じなんですが、全く同じ記事がアメブロにもあがっており、
わざわざ二つあげる必要性がよくわからない…。しかもどちらも公式サイトとドメイン違うのでめっちゃもったいない…。
スライも同様に独自ドメインで運用されているのに、ブログはアメブロだったりします。。
○EC強化を掲げるならドメインの整備が先では…?
コンテンツマーケティングって、その記事で購買意欲やブランドの付加価値を高めたりって効果もあると思うんですが、記事をためていく事でページの価値を高め、SEO強化するっていう効果も期待するはず。アメーバのドメインを育ててバロックジャパンにメリットがあるとは思えません。今あるブログ記事を全てブランドの独自ドメイン直下のディレクトリに格納したらそれだけで効果ありそうですし、「ブランド別通販サイト」を立ち上げるなら同じドメインでブログ運用しないと意味ないのでは?と思います。ブランド別通販サイトが完成した時、「ブログ」をクリックしたらアメブロに飛ばない事を期待しています。
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